トランプ関税ショックが止まらない。こういうときこそどんな戦略で立ち向かえばいいのか。今回は、「『金持ち父さん 貧乏父さん』以来の衝撃の書!」と絶賛されている全米ベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』の著者ニック・マジューリ氏の来日時に独占インタビューを行ったファンドアナリストの篠田尚子氏が登場。篠田氏は「読むと人生が変わる」と話題のベストセラー『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』著者スコット・ギャロウェイのPIVOT特別インタビューにも成功。つまり両者をインタビューした日本で唯一の人物だ。そんな篠田氏は『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』をどう読み、何を学んだのか。インタビュー秘話を盛り込んだ「特別寄稿第4弾」をお届けする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

日本人が忘れがちなこと
『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の著者であるスコット・ギャロウェイ氏は、経済的自立に到達するための要素として、「フォーカス+(ストイシズム×時間×分散投資)」という「富の方程式」を提唱している。
この方程式の「時間」についてギャロウェイ氏は、時間を「資産」として捉え、「浪費したお金は取り戻せても、時間は取り戻せない」と強調する。
単に「お金を得るために時間を使う」ことだけでなく、「時間をどう管理し、活用するか」が富を築くための重要な要素であると述べている。
人類史上最大の「富の破壊者」とは?
最近は若者を中心に「タイパ=時間パフォーマンス」重視の傾向が強まっているという。スマートフォンを駆使して情報をすばやく取得することが当たり前になる中、「勉強法」や「仕事術」など効率化のノウハウを手っ取り早くインプットし、最短で目標に到達することをよしとする風潮が強まっている。
ギャロウェイ氏は、「資産」としての時間をどれだけ効率的に使うかが重要であると述べつつも、こうした現代の「タイパ」現象を先導しているSNSについては、「人類史上最大の『富の破壊者』」であると、強い言葉で非難している。
仕事や現実の人間関係に費やすべき貴重な時間を(既に)何年分も奪っていることに気づかないと、それに気づいている人との間で次第に大きな差が開いていくと、私とのインタビューの際も警鐘を鳴らしていた。
最近は、投資を始めるきっかけがSNSだったという人も多いかもしれない。
私自身は、それ自体は特にかまわないと思っている。
重要なのは、その中の世界に振り回されないということだ。
富を築くきっかけは「富の破壊者」にもなり得るということを覚えておいたほうがいい。
お金持ちが最も大切にするものとは?
なお、ギャロウェイ氏は必ずしも、フードデリバリーやネット通販など、生活の質の向上のためのサービスにお金を使うこと自体を否定しているわけではない。
大切なのは、サービスにお金を払うことでつくった時間を、そのときの気分でやりたいことだけでなく、生産的な活動に使うことだと述べている。
特に若いうちは、できる限り仕事に時間を使い、勉強や人間関係など、年齢を重ねるほどハードルが高くなるものに時間を使うべきであるという。
ギャロウェイ氏は、お金の使い方がうまい人は、時間の使い方、あるいは、時間管理のスキルに長けているという。
「時間を買う」という観点では、フードデリバリー以外にも、自分の得意でない仕事や時間を奪う作業を外注するという考え方もある。
効率よく時間を使うことで成果が上がり、キャリアやビジネスにおいてより多くの収入を得るチャンスも広がる可能性がある。
ギャロウェイ氏の言う通り、浪費したお金は取り戻せても、時間は取り戻せない。
「真の通貨は時間」なのである。
ビジネススクールに通ったのに
「虚しさ」だけが募ってくる人の特徴
では、若い時の時間を有効に活用する方法として、大学院やビジネススクールへの進学についてはどう考えればいいのか。
ギャロウェイ氏は、アメリカのビジネススクールの学費が高騰していることを指摘したうえで、その投資を正当化するハードルはかなり高くなっているとはっきり述べている。
なお、これは、アメリカにおける私立大学への進学についても同様である。
ビジネススクールの学費に費やした額を投資に回していれば、あるいは、進学ではなく、そのまま働いて給料を得ていたら、複利効果(これも「時間」が重要な役割を果たす)でそれなりの資産を築くことができたかもしれない。
学費そのものだけでなく、こうした機会費用についても十分に検討を重ねたうえで進学を検討すべきだ。
なお、これは、実際にビジネススクールに通った私も同意見である。
私の場合は10年以上前に日本で、しかも全日制ではなく仕事を辞めずに夜間制で通ったが、それでも相応の時間と費用を費やした。
ビジネススクールで培った人脈や様々な知識は今もなお大いに役に立っているものの、目的意識と強い意志を持って臨まないと、在学中からただ虚しさだけが押し寄せるだろう。
見た目の給料を上げたいとか、転職に有利に働きそうといった考えを上回る動機が思い浮かばないなら、まずやめたほうがいい。
厳しい言い方になるかもしれないが、あなたのまわりで期待できる人脈もその程度のものになる可能性が高い。
(本稿は、『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』に関する書き下ろし記事です。)
篠田尚子(しのだ・しょうこ)
ファンドアナリスト。CFP®、1級FP技能士
日本で数少ないファンドアナリスト兼FPとして、資産形成の初歩的な解説から具体的な商品の提案に至るまで幅広くカバー。