「インドはカレーではなく、ダイヤモンドの国」9割の人が知らない“すごいインド”とは?
「経済とは、土地と資源の奪い合いである」
ロシアによるウクライナ侵攻、台湾有事、そしてトランプ大統領再選。激動する世界情勢を生き抜くヒントは「地理」にあります。地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。農業や工業、貿易、流通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問なのです。
本連載は、「地理」というレンズを通して、世界の「今」と「未来」を解説するものです。経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの地理講師の宮路秀作氏。「東大地理」「共通テスト地理探究」など、代ゼミで開講されるすべての地理講座を担当する「代ゼミの地理の顔」。近刊『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』の著者でもある。

「インドはカレーではなく、ダイヤモンドの国」9割の人が知らない“すごいインド”Photo: Adobe Stock

あなたはまだ「本当のインド」を知らない!

 インドは近年モータリゼーションの進展(日常生活における自動車の普及)が著しい国です。中間層の台頭による自動車需要の増加を背景としています。

 また2014年9月には、ナレンドラ・モディ首相がGDPに占める製造業の割合を2022年までに25%引き上げる政策、「Make in India(ものづくりはインドにて!)」を発表していました。

 しかし、コロナ禍を背景におよそ15%と未達に終わり、その後、政府は期限を2030年にまで延期します。さらに国内製造のサプライチェーンを育てるために生産連動型インセンティブ制度(PLI)を導入するなどしましたが、土地取得の困難さや中小企業にとっての規制負担、インフラ整備の遅れ、労働力の技能不足など、インドにおける製造業の発展には課題が多く、その克服は困難であり2023~2024年の最新統計でもおよそ16%にとどまりました。目標到達はなお遠い状況です。

インドの意外な産業とは?

 中東の産油国と物理距離が小さいため、原油の輸入が盛んで、これを原料とした石油精製産業も盛んです。「石油製品」は、インドの最大輸出品目(2023年)となっています。意外に思われるかもしれませんが、インドは「ダイヤモンドの国」としても有名です。

 インド各地にある河川では、古くから硬い石が発見されていました。そのため、ダイヤモンドは古く「インド石」と呼ばれていました。原石のままでは「単に硬いだけ」で、美しくもないただの石でした。「ダイヤをダイヤで磨く」方法はベルギーで発明されます。以来、ダイヤモンドは宝石としての価値を持つようになっていきます。

 ローマ帝国に追われ、流浪の民となっていたユダヤ人は、「軽くて小さいため持ち運びしやすい高価な物」としてダイヤモンドに目を付けました。ダイヤモンドの流通には、ユダヤ人が大きくかかわっていきます。ダイヤモンドの採鉱、加工、流通で世界的に有名なデビアス社はユダヤ人が作りました。そして、イスラエルの輸出品目2位がダイヤモンド(11%、2023年)です。

 インドでは、かつてほどのダイヤモンドの産出量はみられませんが、依然として研磨、流通、販売の世界的な集散地として知られています。

(本原稿は『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』を一部抜粋・編集したものです)