新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「勉強が苦手だったり、勉強をしたくない子どもにもチャンスがある」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、外国人も驚く日本の教育の強みについて解説します。

子育て 教育Photo: Adobe Stock

日本の教育の強み

近年、「北欧の教育に学べ」「フィンランド式学びのデザイン」といったテーマの教育書をよく見かけます。確かに、海外の教育には参考になる点が数多くあります。子どもの主体性を重んじる仕組みや、探究的な授業デザインなど、学ぶべきところは多いでしょう。

しかし一方で、私たちは「外国の教育が優れている=日本の教育が劣っている」と思い込んでしまってはいないでしょうか。

実際のところ、日本の教育には世界に誇れる強みが数多くあります。むしろ、海外の教育関係者の中には「日本の教育から学びたい」と言う人も少なくありません。

世界トップレベルの学力

私は仕事柄、海外の教育者・大学関係者や研究者と話す機会が多いのですが、彼らの多くが口をそろえて言うのは、「日本の学生は本当に優秀だ」ということです。

英語が喋れない人が多いという点を除けば、数学的思考力・論理的思考力・読解力の水準は非常に高い。それを裏付けるデータとして、OECDが実施するPISA調査(国際学習到達度調査)があります。

この調査では、各国の15歳を対象に「数学リテラシー」「科学リテラシー」「読解力」などを比較していますが、日本の生徒たちは常に数学リテラシーで世界トップクラスの成績を維持しています。

つまり、「知識の詰め込み教育」と批判されがちな日本の教育ですが、その知識の裏にはしっかりとした思考力が育まれているのです。

単に暗記が得意なのではなく、筋道立てて考え、問題解決に応用する力が身についている。それは、世界的に見ても高い評価を受けています。

「知識」と「礼節」を両立できる国

さらに、日本の教育の素晴らしさは“学力”だけにとどまりません。たとえば、日常生活における礼儀正しさや公共性の高さも、教育の成果のひとつだと言えます。

海外から来た留学生がよく驚くのが、日本の店員さんの対応です。「お客様にきちんと挨拶をする」「お釣りを丁寧に数えて渡す」「落とし物をきちんと届ける」――。こうした行動は、日本では“当たり前”のことかもしれません。

しかし、世界的に見れば、こうした“当たり前”が成立している国はほとんどありません。アメリカやヨーロッパでは、スーパーのレジで店員が無言のまま会計を済ませたり、お釣りが間違っていたりするのは珍しくない光景です。

それに対して日本では、小学生の頃から「相手に感謝を伝える」「周囲の人を気遣う」といったマナー教育が徹底されています。

こうした教育の積み重ねが、世界でも類を見ないほど秩序の保たれた社会を支えているのです。

もちろん、海外の教育には学ぶべき点が多くあります。しかし、日本の教育もまた、世界に誇れる素晴らしい仕組みを持っています。知識と礼節を両立し、学力と人間性を同時に育てる教育。それが、日本の教育の最大の強みです。

だからこそ、海外の事例を無条件に理想化するのではなく、「日本の教育の良さを自覚し、次の時代にどう進化させていくか」という視点が大切だと考えられます。

(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)