
4月24日、群馬銀行と第四北越フィナンシャルグループが経営統合の基本合意を発表した。従来の“救済型”とは一線を画す、“成長”を志向した異例の地銀再編である。業績が堅調で地元シェアの大きな地銀同士がなぜ越境統合に踏み切ったのか。その内幕と狙いに迫る。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
成長志向の地銀再編
強者連合の内幕とは
「“救済”ではなく“成長”のための経営統合。地銀再編の常識を覆す、極めて珍しいケースだ」
こう語るのは、地方銀行セクターを長年追ってきた岡三証券の田村晋一アナリストだ。4月24日、群馬銀行と第四北越フィナンシャルグループ(FG)が発表した経営統合の基本合意。その一報に対する評価である。
経営統合のスキームとしては、2026年3月に最終契約を締結し、同年12月の臨時株主総会を経て、27年4月1日に統合を実施する予定だ。群馬銀行は株式交換により上場を廃止し、第四北越FGを母体とする統合持株会社の完全子会社となる。
これまでの地銀再編は、収益力に乏しく単独での生き残りが難しい中小地銀を、より健全な地銀が“救済”するという構図がほとんどだった。
だが、今回は従来の再編とは全く様相が異なる。両行とも業績は堅調で、自己資本も潤沢。それぞれが単独で地元のトップシェアを維持する健全な地銀同士が、あえて手を組んだのだ。統合後のグループは、総資産約21.4兆円、25年3月期の純利益予想は単純合算で680億円と、地銀としては全国屈指の規模を誇る。さらに、27年3月期には950億円もの利益水準も視野に入る。
しかも、よくある店舗統廃合による効率化という文脈すら当てはまらない。群馬県と新潟県という隣県同士ながら、営業エリアはほとんど重複せず、支店競合も実質的にはない。
それでも、統合への意思決定は速かった。昨年11月、群馬銀行の深井彰彦頭取が「経営統合を視野に協議しませんか」と切り出すと、第四北越FGの殖栗道郎社長は「ぜひお願いします」と即答したという。
異例尽くしの地銀再編は、なぜこれほどスムーズに進んだのか――。次ページでは、会見で明かされた詳細な経緯とともに、両行が経営統合の基本合意に踏み切った狙いとその裏側に迫る。