はじめての休暇で実家に戻り
かけがえのなさを実感するのぶ

 嵩は美術学校を受験することを決意した。ところが、そこでも数学が課題になっていた。

「漫画描いてる場合じゃないよ。俺は何がなんでも苦手な数学を克服する」と嵩はついにやる気になった。

 一方、のぶ(今田美桜)の女子師範学校の生活は。教師・黒井雪子(瀧内公美)が否定と押しつけの教育を敢行していた。

 のぶ(今田美桜)に「あなたの価値はそれ(体育の成績がいい)だけです」とバカにするようなことを言い、家族のためにがんばることを「甘ったれた精神」と全否定。

 うさ子(志田彩良)には「メソメソするな!」「あなたは弱すぎる かがみ川のボウフラよりも弱い」と頭ごなしに叱りつける。

 寛とは真逆である。

 だがのぶは怯まない。燃えるような瞳で黒井をまっすぐ見つめる。

 彼女が強く生きられるのは、家族が彼女をあたたかく、自由に生きられるように育んでくれたからであろう。

 はじめての休暇で実家に戻ったのぶは、家庭料理やあんぱんを食べながら、実家のかけがえのなさを実感するのだった。

 家の良さを知っているのは蘭子(河合優実)である。羽多子(江口のりこ)に蘭子も我慢しないで好きなことをやるといいと言われると、「この家(うち)がえいが」とさらりと言う。

「朝はふいごの音で目をさまいて。のみのカンカンいう音。焼きたてのパンのにおい。コツコツ石を削る音。そういうこのうちが好きがやが」と蘭子が口にする、毎日の当たり前の生活の様子はまるで詩のようであった。

 蘭子は一見、控えめに見えるが、意志ははっきりしていて、好きなものとそうでないものへの態度ははっきりしているようだ。岩男(濱尾ノリタカ)がパンを買いに来てもそっけない。お祭りのときもそっけなかった。

 あきらかに岩男は蘭子に気があるのがわかるが、蘭子は目を伏せて、一切媚びない。愛想笑いを浮かべるようなことは決してしない。