50代が陥る住宅ローン地獄、賢い人が「死ぬまでに完済しよう」と決して思わない理由〈FPが解説〉シニア層が老人ホームに入居する際にまとまった資金が必要となり、自宅の売却を検討するケースもある(写真はイメージです) Photo:PIXTA 

首都圏の新築マンションのみならず、中古マンション価格も高騰し、その上、金利が上がっている。住宅を購入するために50代からローンを組んだり、組み直したりすると、返済期間が短いため返済額は大きく、生活費を切り詰めなければならなくなる。これは「死ぬまでに、借金を清算しよう」という考えによるものだが、本当にその必要はあるのだろうか。中高年のローン返済のベストな方法を探る。(生活経済ジャーナリスト 柏木理佳)

〈銀行は、なるべくローン貸し出しの件数を増やして利益を出していた頃とは違い、今や審査を厳しくしている。特に定年前の50代後半ともなると、急に審査が厳しくなる。仮に審査を通っても完済までの期間が短いため、月々のローンの返済額は賃貸契約で部屋を借りるよりも上回ってしまう。どうしたものか〉

 こう嘆くのは、中小メーカーで任期付き契約社員として働いている竹内幹夫さん(仮名・58歳)。東京23区は賃貸物件の家賃が高騰しており、 住んでいるアパートのオーナーから家賃を1万5000円も値上げされたばかりでした。

 しかも竹内さんは半年前に転勤のない会社に転職したばかり。年収が下がったので安い部屋に引越しすることも考えましたが、将来の年金が月8万円ほどしか受給できない見込みなので、住み続けられるか分かりません。〈こうなったら長年の夢だった家を買うしかない〉と思い立ちました。

 意を決して銀行のローン窓口へ借り入れ相談で訪問。貯金から1200万円を切り崩し、これを頭金にして近所の築30年の6000万円の中古マンションを購入しようと思ったのです。マンションが手に入れば、今払っている家賃14万円のところを7万円のローン支払いにできると期待していました。それなら定年後、少しアルバイトをすれば年金だけでもなんとか生活ができそうだと楽観的に考えていました。

 ところが、銀行では審査がなかなか進みません。固定金利、元利均等返済方式を選択する場合、毎月の返済額が13万円となり、今の家賃14万円とほぼ同じです。それでも、夢のマイホームを諦めたくなかった竹内さんは、ある方法で家賃を減らすことにしました。いったい、どうやって毎月の家賃分を減らすことができるのでしょうか。