スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術――限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』より、特別に一部を紹介する。

「マルチタスク」で効率が落ちる
ご近所に神経科学者が住んでいたら、マルチタスクと脳の関係について訊いてみるといい。「脳は一度に1つのことにしか集中できない」と、かれらは証言してくれるはずだ。
脳について、少し説明しておこう。
脳は注意を要するタスクに対処しながら、同時に流れ込んでくる情報を処理することはできない。
スタンフォード大学の神経科学者エヤル・オフィル博士は「人間はじつのところマルチタスクなどしていない。タスク・スイッチング(タスクの切り替え)をしているだけだ。タスクからタスクへとすばやく切り替えているだけだ」と説明している。
こうした行動を続けているとマルチタスクをしているような気分にはなるものの、現実には、脳は一度に2つ以上のことに集中できない。そのうえ、注意をあちこちに向けていると、効率が落ちる。
切り替えるたびに集中力が落ちる
それだけではない。マサチューセッツ工科大学のアール・ミラー博士はこう述べている。
「なにかをしているときに、べつのこと(タスク)に集中することはできない。なぜなら2つのタスクのあいだで『干渉』が生じるからだ。人にはマルチタスクをこなすことなどできない。『できる』という人がいるとしたら、それはたんなる勘違いだ。脳は勘違いするのが得意である」
手みじかにいえば、マルチタスクは不可能であり、一般に「マルチタスク」と考えられている行為は「タスク・スイッチング」にすぎない。タスクからタスクへとせわしなく注意を向ける先を無益に変えているだけだ。
タスクの切り替えには0.1秒もかからないため、当人はその遅れに気づかない。
マルチタスクをこなそうとすると、瞬時に集中する対象を切り替えるよう脳が強要される。すると遅れが生じ、切り替えのたびに集中力が落ちる。
こうしたことが積もり積もると、貴重な時間が無駄になるうえ、知力が衰える。マルチタスクをしようとすると、かならず落とし穴にはまるのだ。
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術――限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』からの抜粋です)