Photo by Hirobumi Senbongi
農協の経営が急速に悪化している。ダイヤモンド編集部の取材により、53JAが2025年度、赤字に転落し、税引き前当期純損失額が合計709億円に上ることが分かった。同損失額は前年度の2.8倍に増えている。その要因は、長期金利の上昇に伴って価格が下落した国債の“損切り”を迫られたことだ。長期連載『儲かる農業 JA・豪農・アグリビジネス大激変』の本稿では、赤字に陥った農協の実名とその赤字額、さらには今後、巨額損失を計上する可能性が高いハイリスク農協を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文、データ分析 小海敬義)
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有価証券の損失は3.2倍の合計776億円!
自己資本比率が自主基準8%を下回る農協も
「今回の損失処理は組合の内部留保を大きく減少させ、前例のない決算となった。この経営責任はどのように考えているのか」
この質問は、JA埼玉ひびきのが6月に開いた総代会(企業の株主総会に相当)で、農協への出資者である組合員の代表から出たものだ。同農協は長期金利の上昇に伴って価格が下落した債券の売却損を2025年度、53億7276万円計上し、48億9998万円の最終赤字に陥った(前年度は3億4640万円の赤字)。
経営責任を問う質問に、農協は、常勤役員(組合長、専務、常務、常勤監事)や前組合長、前専務が役員報酬の一部を自主返納することを説明したが、組合員らの怒りは収まらなかった。総代会では、「何年も前に日銀のマイナス金利政策は解除され、金利上昇局面となっていた。なぜこうなる前にもっと早い損切りの決断ができなかったのか」など、批判的な質問が続いた。
組合員が経営陣を批判するのも当然だ。債券運用の失敗により、利益剰余金は前年度から65%減少。単体の自己資本比率は前年度の17.21%から7.60%まで悪化し、JAバンクが自主ルールで定める基準8%を下回った。同基準を下回ると「要改善JA」に指定され、上部団体である農林中央金庫の指導の下で経営改善に取り組むことになる。さらに、自己資本比率が6%を下回ると融資を制限される。
国債などの運用失敗により、巨額損失を計上した農協はJA埼玉ひびきのにとどまらない。静岡県のJA大井川も国債の売却損を計上し、同県内の農協として過去最大となる121億0384万円の最終赤字に沈んだ(前年度は連結で3億6876万円の黒字)。
実は、JA埼玉ひびきのやJA大井川が巨額赤字に陥ることは予想されていた。ダイヤモンド編集部が今年2~4月に公表した国債の「巨額損失リスク」農協ランキングで、両JAはそれぞれ全国ワースト1位、2位だった(詳細は『【国債の「巨額損失リスク」農協ランキング完全版・ワースト455JA】有価証券の売却損で、内部留保が激減しかねない“危険水域”の42農協を一挙公開!』参照)。
全国に480ある農協の経営が急速に悪化している現状を踏まえ、ダイヤモンド編集部は25年度決算の緊急調査を実施。農水省や全国の農協を束ねるJA全中に先駆けて、赤字額や赤字農協数などを速報することにした。
緊急調査の結果、全国で53JAが赤字に転落し、税引き前当期純損失額の合計は前年度の2.8倍の709億円に上ることが分かった。
国債をはじめとした有価証券の売却、もしくは減損による損失額(有価証券関連損失額)の合計は、同3.2倍の776億円に達した。前出のJA埼玉ひびきの以外にも、債券の運用失敗により、内部留保が激減し、財務が棄損する農協が続出している。これらの赤字額や損失額は8月7日までに確認できた農協の合計であり、今後、決算情報の開示が進めば、さらに膨らむとみられる。
次ページでは、赤字に陥った53JAの実名とその赤字額、さらには、多額の有価証券の含み損を抱えており、今後、巨額損失を計上する可能性が高いハイリスク農協を明らかにする。








