金融インサイド#44Photo:PIXTA

「金利のある世界」が戻り、地方銀行の収益環境が好転する一方、人手不足を背景に人材獲得競争は激化している。そこで地銀94行の有価証券報告書を、人事戦略と人材育成の計8項目で独自評価した。採点結果からは、開示において「積極的に注力する地銀」と、「出遅れている地銀」の二極化が浮き彫りになった。長期連載『金融インサイド』の本稿では、先進行の事例を基に、地銀が人的資本開示で押さえるべき三つの要点を明らかにする。(リンクアンドモチベーション モチベーションエンジニアリング研究所 研究員 花岡健太)

人的資本の開示で進む二極化
約2割の地銀が0点に

「金利のある世界」が戻り、銀行の収益環境は大きく改善した。貸出金利の上昇は追い風となり、地銀再編の流れも加速している。

 この環境下で競争力を左右するのが、行員の知識や経験、能力を事業の成長につなげる「人的資本」だ。

 どのような人材を育て、どこに配置するのか。人材への投資を、収益や生産性の向上にどう結び付けるのか。人手不足が進む中、人的資本戦略は人事部門だけのテーマではなく、銀行の将来を左右する経営課題としての重要性が一層高まっている。

 では、地銀における人的資本の取り組みは、どこまで進んでいるのだろうか。この点を検証するため、地銀94行(有価証券報告書の提出のない東京スター銀行を除く)を対象に、人事戦略と人材育成に焦点を当てて開示内容を分析した。

 人事戦略では、(1)投資規模を明示しているか、(2)人事戦略の定量KPI(重要業績評価指標)を設定しているか、(3)経営戦略とのつながりを説明しているか、(4)銀行収益や生産性などの事業成果指標まで結び付けているかを確認した。

 人材育成では、(5)人材要件の定義を明示しているか、(6)育成プロセスを明確化しているか、(7)能力の定量目標を設定しているか、(8)育成プロセスを構造的に整理しているかを評価した。

 評価項目は計8項目。人的資本への関心が高まる中、地銀94行の開示はどこまで進んだのか。

 次ページでは、地銀94行の採点結果の分布を公開する。8点満点中6点以上の地銀が前年より増えた一方、全項目で基準に届かなかった0点の地銀も2割近くに上った。山陰合同銀行、しずおかフィナンシャルグループ(FG)、七十七銀行、CCIグループ、北洋銀行の好事例を通じ、地銀が人的資本開示で押さえるべき要点を明らかにする。