日揮・千代田化工・東洋エンジ、エンジ御三家の反転攻勢Photo by Tohru Sasaki

千代田化工建設が、巨額損失で業績が乱高下する従来型ビジネスとの決別を鮮明に打ち出している。超大型案件のリスクを一社で抱える仕事の取り方を変えるほか、国内の医薬・ライフサイエンスや先端素材を安定収益の土台とし、全固体電池材料などを次の収益源に育てようとしているのだ。長期連載『エネルギー動乱』内の特集『日揮・千代田化工・東洋エンジ エンジ「御三家」の反転攻勢』の本稿では、同社の太田光治社長を直撃し、「二度と昔には戻らない」と掲げる経営改革の全貌に迫った。三菱商事の支援を受けてきた経営再建の区切りや復配時期の見通しなどに加え、自身の後継者選定についても聞いた。(聞き手/エネルギージャーナリスト 宗 敦司、ダイヤモンド編集部 金山隆一)

パートナーや顧客とリスク分担
次の中期計画では再び海外でアクセル

――中東情勢の緊迫化は、カタールのLNG(液化天然ガス)プロジェクトにどのような影響を与えていますか。

 当社が過去に納入したLNGプラントが攻撃を受け、カタールの生産能力にも影響が出ています。復旧については顧客と協議しており、被害範囲の調査にはすでに着手しました。損傷設備の撤去、その後の復旧工事という段階を踏んで進めることになります。

 一方、現在進めている増設工事では、情勢悪化を受けて日本人約120人のうち約90人を一時退避させました。発注者が警報アプリの導入や避難場所の確保、ゲートの増設、バスの増車などの安全対策を講じたことを確認し、4月中旬ごろに人員を戻しました。工事は3週間ほど止まりましたが、現在は本格的に再開しており、現時点では懸念したほど大きな影響は出ていません。

――千代田化工は従来型のエンジニアリングビジネスからの転換を図ると掲げています。これまでは主に大型のLNG案件を一括請負(ランプサム)で受注してきました。

 大型LNGプロジェクトをランプサムで、すぐに操業が可能になるターンキー形式で請け負うと、何年かに1度、予見できなかったリスクが顕在化し、1件の損失で他の案件の利益を吹き飛ばしてしまいます。再建計画をスタートした2019年度から24年度までの6年間では4期が黒字、2期が赤字でしたが、赤字の2期はいずれもLNGプロジェクトの損失が原因でした。これでは、せっかく利益を稼いでも会社の体力が回復しません。

 今後は、LNGも含めて案件当たりの規模を抑え、パートナーとリスクを分担しながら取り組んでいきたいと思います。一つの案件の採算や延期、失注で会社全体の業績が左右されないポートフォリオへ転換し、安定的に利益を出せる体質に変えていきます。

 とはいえ、ランプサム契約を全くやらないわけではありません。実際、中東では1000億円規模のプラントをランプサムで受注しています。ただし、何千億円、1兆円という超大型のランプサム案件を一社で抱えることは、もうやりません。パートナーと組み、リスクを分散できることが前提です。

 売上高をつくるために、無理をして超大型案件へ走ることはもうしません。今の中期経営計画の期間(25~27年度)は、その覚悟を持って会社の体質を変える時期だと考えています。そして次の中期経営期間では、新しい取り方で、海外に再びアクセルを踏み、復活させていきたいと考えています。

 発注者側にも変化が出ています。コントラクターに全てのリスクを押し付ければ問題が解決するわけではないという理解が広がり、少なくとも米国では適切なリスク分担について協議できる環境になってきました。

――大型LNGに代わる収益の柱として、国内ではどの分野を伸ばしていくのですか。

大型LNGという巨大ビジネスに代わり、どこを収益源にして成長を目指すのか。10年先を見据え、会社をどのように変え、経営を再建していくのか。三菱商事の優先株を償還し、いつプライム市場復帰を目指すのか。三菱商事出身の社長として次の経営のかじ取りを誰に任せるのか。次ページで太田社長が語っている。