米中貿易戦争の渦中にあるのは、全ての新型電気自動車(EV)に不可欠な磁石だ。大きさは薄型キーボードの小さいキーほどしかない。この磁石にはジスプロシウムが使われている。原子番号66で、銀色の金属光沢を持つレアアース(希土類)だ。精製したジスプロシウムの90%以上を中国が供給しており、医療機器からEVモーターまであらゆるものの磁石に使用されている。米国の関税に対する報復として、中国は4月に複数のレアアース鉱物と磁石の輸出を制限し、米自動車メーカーを動揺させた。「磁石がないとモーターが作れない」。ある自動車業界幹部はそう話す。「米国でEVを生産し続けたいなら、解決策が必要だ」中国は同鉱物の輸出について、米企業に許可取得を義務付けた。手続きには数カ月かかるため、自動車メーカーは在庫補充を見通せなくなっている。