強制的に入院させられ全裸で消毒される
正気じゃないけれど……奥深い文豪たちの生き様。42人の文豪が教えてくれる“究極の人間論”。芥川龍之介、夏目漱石、太宰治、川端康成、三島由紀夫、与謝野晶子……誰もが知る文豪だけど、その作品を教科書以外で読んだことがある人は、意外と少ないかもしれない。「あ、夏目漱石ね」なんて、読んだことがあるふりをしながらも、実は読んだことがないし、ざっくりとしたあらすじさえ語れない。そんな人に向けて、文芸評論に人生を捧げてきた「文豪」のスペシャリストが贈る、文学が一気に身近になる書『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』（ダイヤモンド社）。【性】【病気】【お金】【酒】【戦争】【死】をテーマに、文豪たちの知られざる“驚きの素顔”がわかる。文豪42人のヘンで、エロくて、ダメだから、奥深い“やたら刺激的な生き様”を一挙公開！
イラスト：塩井浩平
あの滝で、自分が死んでいれば……
ソウル生まれ。本名・七條晃司。代表作は『いのちの初夜』。高等小学校を卒業後、上京し、法政中学夜間部で勉強するなどプロレタリア文学を志すが、19歳でハンセン病を発症。東京・東村山のハンセン病療養所「全生病院」（現・国立療養所多磨全生園）への入院を余儀なくされる。病院から川端康成に作品を見てほしいと手紙を書き、作品を執筆。自身の経験をもとに書いた代表作『いのちの初夜』は、小林秀雄が「文学そのもの」と評するなど文壇から高い評価を得て、第2回文學界賞を受賞、芥川賞候補にもなった。作品集『いのちの初夜』がベストセラーになったものの、腸結核のため、その短い一生を23歳で終えた。
■結婚生活の終焉と絶望
差別と偏見の対象となっていたハンセン病の感染によって、結婚した翌年、昭和8（1933）年に早々と離婚。
幸せになるはずだった結婚生活が終わりを告げ、社会から隔離された北條は、絶望して自殺することを考えます。
■命を絶とうとした幾度もの試み
同郷の年上の友人と華厳滝に行き、滝つぼに飛び込もうとしたり、睡眠薬を飲んだりと、何度か自殺をしようかと思ったものの、死にきれませんでした。
華厳滝では、友人だけが死んでいます。
■強制隔離と入院の現実
昭和6（1931）年に成立した「らい予防法」で、ハンセン病患者の強制隔離が法制化されていたため、北條は離婚した翌年、昭和9（1934）年に上京した父親に連れられ、東京・東村山のハンセン病療養所「全生病院」（現・国立療養所多磨全生園）への入院を余儀なくされました。
■全裸での消毒、そして検査の日々
全生病院に入院すると、北條は入浴させられたのち、全裸で消毒されました。
それから縞模様の着物に着替えさせられ、しばらくは病歴の聞きとりや余病の検査を受けさせられたのです。
■持ち物の没収と“金券”への交換、重症病棟の衝撃的な光景
逃走防止のためか、金品を含むすべての持ち物が没収され、収容された病院内でしか使えない「金券」などと交換させられたといいます。
最初は重度のハンセン病患者がいる病棟に入れられたのですが、その光景にショックを受けました。
※本稿は、『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』（ダイヤモンド社）より一部を抜粋・編集したものです。
