自分は将来どうなるだろうか……。そんな不安を持つ人は少なくない。「いつまで第一線でいられるか」「いつまで他人と競えばいいのか」「いまいる友達は60歳になっても友達か」「気力体力はどうなるか」「お金は?」「いまのうちにやるべきことは?」など。そこで本連載では、2025年に60歳を迎える奥田民生の10年ぶりの本『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』の中から、民生流の「心の持ち方、生きるヒント」を紹介する。吉川晃司との新ユニット「Ooochie Koochie」(オーチーコーチー)も話題の奥田民生は、これまでどのように考え、どのように働き、どのように周りとの関係を築いてきたのか。その頭の中をのぞいてみよう。(構成/ダイヤモンド社・石塚理恵子)

老後「もっと挑戦すればよかった」と後悔する人が知っておくべきたった1つのこと
Photo by Takahiro Otsuji

民生流「飽き」との付き合い方

 この歳になるといろんなことに飽きてくる。

 仕事、遊び……、それどころか人生にも飽きてくる。

 俺なんてかれこれ30年以上、同じ仕事をしているわけだから、それも当然のことだろう。

 そうかといってなにもかもを投げ出して暇になっても、人間、ろくなことを考えない。

 だから仕事もプライベートも暇じゃない方がいい気はしている。

「飽きたらやらない」という選択肢もある

 俺の場合、飽きると一番困るのは「音楽」だ。

 これに飽きると仕事ができなくなってしまう。

 そうなったらすごく困る。

 飽きずに続けるコツと言ったら「やり続けない」ことだと思う。

 だから俺はいつも音楽のことばかり考えないよう、暇なときはギターを弾かないだとか、そもそも触らないように気をつけている。

 続けるためには「ときどきやらない」ことが必要なのだ。

 人生は長いから、ときには仕事も遊びも日常生活もあえてちょっとおろそかにして、やらなきゃいけないときだけ集中してやる。

 ちょっとサボってその後でまた前線復帰。その繰り返しで俺は飽きから逃げている。

隣の芝生に挑戦する?

 もう1つ飽きを紛らす方法があるとしたら、本来とは違うことをやることだろう。

 たとえば俺は一時期、やたらとドラムばかり叩いていた。

 俺的にも世の中的にも、俺がドラムが上手くなったところでいいことはない。

 でもこういうどうでもいいっちゃ、いいことをやってみると、モチベーションを保てたりする。

 だからたとえば事務の仕事をやってる人がすごく仕事に行き詰まったら、誰にも言われてないのに勝手に営業をしちゃうとかいいと思う。

「契約取ってきました!」「お前がすんな!」みたいな感じだ。

 自分のモチベーションを上げるために自分の持ち場、自分の役割じゃない仕事をあえてやると「なんだ、自分の仕事の方がいいじゃないか」と気づくこともあると思う。

挑戦すると大事なものが見えてくる

 仕事も人生もそうだけど、同じことを続ければ誰にでも「飽き」は来る。

 だからときにはあえて違うことをしてみたり、苦手なことにチャレンジしたりしてみると、本当にやりたいことが見えてくる。

 俺もドラムばっかり叩いた後でギターを弾くと「やっぱりこっちだな。ギターの方が上手いな」って、当たり前なんだけどそう思いながらほくそ笑むことがある。

 すごく小さな喜びだけど、メンタル的にはこれはかなりインパクトがある。

 結局、人って長くやり続けてきたことが得意なことだし、ほんとに好きならどんなに飽きても最後はそこに戻ってくる。

 人生なんてそうやって自分の飽きと向き合いながら、うまく乗りこなしていくしかない。

(本稿は奥田民生『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』からの抜粋記事です。)