投資には常に「不確定要素」がつきものだ。一体どうすれば、不運な目に遭わずに投資で成功できるのか? 今回は、「読むと人生が変わる」「『金持ち父さん 貧乏父さん』以来の衝撃の書!」と絶賛されている、全世界40万部突破のベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(ニック・マジューリ著)を題材に、数々の実績を積み重ねてきた「絶対達成コンサルタント」横山信弘氏が「安定した成果を出し続ける管理職の口グセ」を語る。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

【部下から信頼ゼロ】時代が変わった途端に結果を出せなくなる残念なマネジャーの口グセ・ワースト1Photo: Adobe Stock

過去の栄光に縛られているマネージャー

歴史ある企業に勤めるマネジャーの多くは、過去の栄光に縛られているケースが多い。

特に長年培った技術力を武器に成長してきた企業においては、その傾向が強い。

右肩上がりの時代であれば問題なかった考え方も、VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)の時代になると、とたんに通用しなくなる。

そんな上司なら、部下からの信頼もゼロになるだろう。

そこで今回は、時代が変わるとなぜか結果を出せなくなる「マネジャーの口グセ」について解説する。

時代の変化について行けず、最近成果が出せなくなっているマネジャーは、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

残念なマネジャーの特徴

ある歴史あるメーカー企業でも同様のことが起きていた。

創業60年を超える同社の営業部長は、過去20年以上にわたり、素晴らしい成果を出し続けていた。

ところが、ここ最近、業績が落ち続けている。

後でわかったことだが、この会社の営業力が高かったわけではなく、そもそもの事業力と歴史ある会社のブランド力によってお客様からの引き合いが多かっただけだったのだ。

20年以上も受け身で営業をしてきた体質を変えるのは、至難の業だ。

ところがこの営業部長は、その難しさを理解していなかったようだ。部下から相談を受けても、次のような口グセを連発した。

「それはケースバイケースだ」

なぜ「ケースバイケース」はダメなのか?

たとえば部下が「今回のお客様には、いつアプローチすべきでしょうか?」と相談してきたとしよう。
そのとき、「それはケースバイケースだよ」と言ってしまうマネジャー。この返しはとても残念だ。

「展示会の後だったり、問い合わせがあったときだったりね」
「お客様の状況によるよ」
「金融機関から紹介があった場合は別だし……」

このようなときに、「そのとき、そのときで、違う」「状況による」というフレーズを使ってしまう。

「ケースバイケース」という言葉は、とても便利な言葉だ。

なぜなら誰でもストレスなく言えるからである。上司でなくても言えるし、おそらく部外者の私でも言えるだろう。「ケースバイケース」というのは、答えではないからだ。

部下に求められているのは、「答え」である。参考になるアドバイスである。
したがって本来なら「イフゼンルール」を意識して返すのが教科書的には「○(まる)」だ。

「もし展示会のときに名刺交換をしたのなら、その日のうちにこのようなメールを送って、次の日に一本電話したらいい」

「金融機関から紹介があったケースなら、できる限り専務と同行してもらったほうがいい」

「ケースバイケース」などと逃げていないで、「このケースなら、こうする」「こういったケースなら、こうしたほうがいい」とアドバイスする。最低でも、これくらいのアドバイスができないと上司としての責務は果たせない。

「イフゼンルール」も万能ではない

ただ、コンピュータの世界ならともかく、この「イフゼンルール」を人間が常に意識して実践できるかというと、かなり難しい。

こんなときは株式投資の考え方が参考になる。

ベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』には、このように書かれてある。

――実に97%の確率で、バイ・ザ・ディップはドルコスト平均法のパフォーマンスを下回ることがわかった――

※ドルコスト平均法 → 例:毎月100ドル、40年間投資する
※バイ・ザ・ディップ(押し目買い) → 例:毎月100ドル貯金して、相場の下落時のみに買う

相場が下落したら買う、というのは、まさに「イフゼンルール」の発想だ。

ケースバイケースは言語道断。しかし「イフゼンルール」より「ドルコスト平均法」のように一つのルールに則って、淡々と買い続けたほうが成績がよくなる。投資の世界では証明されているのだ。

営業活動も、よく似ている。

「お客様の状況に合わせてアプローチを変える」

というのは多くのケースで理想論である。

しかも、今回紹介したような受け身で営業をしていた企業ではなかなか現実的ではない。したがって、次のようなルールを設定したほうがいい。

戦略的にお客様を絞り込み、定期的にこのようなアプローチを淡々と続ける。よほどのことがない限り状況に応じてアプローチ手法は変えない。これが当社の営業ルールだ

理由は、シンプルなルールのほうが個人のスキルに関係がなく守られやすいし、長く継続できるからだ(もちろん、投資先のポートフォリオを定期的に見直すように、営業先のポートフォリオも定期的にリバランスするのが条件である)。

上司は覚悟をもってルールを決める

会社に歴史があり、技術力が高かったから、引合い対応だけでもそれなりに結果を残せた。それなりの期間、業績は安定した。

しかし外部環境が大きく変動している今、「状況に応じて」とか「臨機応変に」とか言って顧客対応をしてはいけない。成果が安定しないからだ。変動性が激しいときほど、その都度判断するのはよそう。

特に経験の少ない若者には「拠り所」を与えるべきだ。部下の立場になって考えてもらいたい。

「自分なりに考えて、臨機応変にやってくれ」

と上司に言われるより、

常にこのルールに則ってやってくれ。長期的には絶対にうまくいくから

と断言されたほうが、よほど心強い。
どのようなお客様に、どのような頻度で、どのようなアプローチをし続ければ、安定した成果を出せるのか。その法則を見つけるのが経験のあるマネジャーの務め。

この分野で20年以上、現場でやってきた私が断言する。正しい戦略のもと「JUST KEEP BUYING」と同じ思想で『JUST KEEP APPROACHING」すること大事だ。

(本稿は、『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』に関する書き下ろし記事です。)

【執筆者プロフィール】
横山信弘(よこやま・のぶひろ)

企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。