昨年から新NISAがスタートしたが、投資にはトランプ関税の影響など「不確定要素」がつきものだ。一体どうすれば、不運な目に遭わずに投資で成功できるのか?
そこで今回は、「読むと人生が変わる」「『金持ち父さん 貧乏父さん』以来の衝撃の書!」と絶賛されている、全世界40万部突破のベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(ニック・マジューリ著)を題材に、数々の実績を積み重ねてきた「絶対達成コンサルタント」横山信弘氏が自己投資のヒントを語る。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

【有名大学を出たのに……】「投資対効果」の意味がわからないZ世代の残念な思考パターンPhoto: Adobe Stock

まるで成長しない「幹部候補生」の謎

3年前に有名大学から採用した幹部候補が、まるで成長しない

先日、ある企業の役員から相談を受けた。
入社当初は期待値が高かったが、3年経っても空回りが続いている。

「何事も早く終わらせようとするが、肝心な部分がすっぽり抜け落ちている」と嘆く。

何が問題だったのか?

そこで今回は、投資対効果の高いスキル開発のコツについて解説する。貯金と投資の違い、その手順と同じ発想で解説する。ご興味がある方は、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

「タイパ」と「コスパ」重視の落とし穴

昨今「タイパ」「コスパ」を過度に重視する人が増えた。特にZ世代で顕著だ。

「早く成長したい」
「QOLの高い人生を送りたい」

※QOL=Quality of Lifeの略。「生活の質」や「人生の質」を意味する 

このように、近視眼的にリターンを求めてしまう。

もちろん、タイパ(タイムパフォーマンス)とコスパ(コストパフォーマンス)の概念自体は間違っていない。投資した時間やコストに対して、相応のリターンを期待するのは当然だ。だが、あまりに短期的な視点で物事を見てしまうと逆効果になることが多い。

「このロジカルシンキング研修は、今の仕事に必要なんですか?」
「このプレゼン研修を受ける意味、ありますか? AIに考えさせたらいいですよね?」

冒頭で紹介した有名大学卒の若者も、上司に対してこうした質問を繰り返していたという。口ぐせは「投資対効果」だ。

「投資対効果が低いスキルアップ研修は、できる限りやりたくないです。時代遅れなので」

「スキルの貯金」という発想が欠けている

私はその役員に「投資」の話を例に出してアドバイスした。

「そんなに投資対効果という言葉を使うなら、投資のセオリーを知っておいたほうがいいでしょうね」
「どういう意味ですか?」
「投資して効率的にリターンを得たいなら、まずは貯金すべきです」

そもそもビジネスにおいて「結果」を出すのも、「成長」するのも、会社に「貢献」するのも、すべてリターンである。もちろん「高いQOL(Quality of Life)」も、何らかの投資をした後に得られるリターンだ。

しかし、投資をするためには「元手」がなければ話にならない。

ベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』にも「貯金」の重要性が書かれてある。その部分を引用しよう。

――投資資産が少ないなら、貯金を増やすこと(そしてそのお金を投資すること)に注力すべきだし、すでに大きな投資資産があるのなら、投資計画に時間を費やしたほうがいい。思い切った言い方をすれば、貯金は貧しい(投資をするお金がない)人のためのものであり、投資は豊かな(投資をするお金がある)人のためのものだ――

どんなに有名大学を出ても、まだ会社に貢献できるほどの資産がないなら、まずはスキル資産を貯めることだ。

目先の仕事に役立たなくても、将来的に恩恵を受けられるスキルであれば、今のうちに自己研鑽して「スキルの貯金」に励む。

たとえばヒューマンスキルとコンセプチュアルスキル。この2つは今の時代、どこに行っても通用する「ポータブルスキル」だ。

ヒューマンスキルとは、人間関係を構築する能力。具体的には共感力、質問力、傾聴力、プレゼン力などだ。

一方、コンセプチュアルスキルとは論理的思考力、課題発見力、仮説思考など。

これらのスキルは身につけたからといって、すぐに仕事の成果に直結するわけではない。しかも経験値とともに育まれていくスキルでもある。だからこそ、若いうちに「貯金」しておくべきなのだ。

AIの時代だからこそ「ポータブルスキル」が必要

「今はAIがあるから」
「上司が教えてくれるから」
「質問すればいいから」

その幹部候補の若者は、いつもこのように言っていた。
ChatGPTに質問すれば答えが返ってくる。上司に相談すれば解決策を教えてもらえる。自分で考え、トライ&エラーを繰り返していると「タイパ」が悪い。

しかし、そんなことをしていると「スキルの貯金」ができない。外部に頼るばかりでは、いつまで経っても自分のスキルは向上しない。

一方で「スキルの貯金」を若いうちから始めた人は、そのスキルを元手に投資ができる。たとえばファシリテーションスキルというのは、複合的なスキルだ。

「ファシリテーション力をアップしたい!」

といっても、共感力、傾聴力、質問力、メタ思考、仮説思考、アナロジー思考、ダンドリ力――といった多様な知識、スキルが土台としていないと、ファシリテーション力は身につけようがない。

だから「スキルの貯金」ができている人は、そのスキルを投資しながら、また新たなスキルの獲得(リターン)ができるようになっていく。

そして自己投資を続けると、ある程度の年齢になったときは、ふんだんにリターンが返ってくるようになってくるのだ。短時間の仕事で、大きな付加価値を生み出せるようになる。そうなって初めて「高いQOL(Quality of Life)」が手に入ると考えよう。

まずは将来につながる「スキルの貯金」から

いま目の前にある仕事だけを考えず、5年後、10年後の自分に必要なスキルは何か? それを考えよう。

そのためには、すぐには役に立たないように見えるスキルにも、積極的に貯金する姿勢が必要だ。

投資と同じく、スキルの獲得にも「複利」の効果がある。若いうちに身につけたスキルは年月を経るごとに価値を増していく。

タイパやコスパを過度に重視して、近視眼的なリターンばかりを求めないほうがいい。自由な時間がほしい、すぐに成長したいという気持ちはわかる。しかし、それは適切な「スキルの貯金」があってこそ実現するものだ。そんな大切なことを『JUST KEEP BUYING』は改めて教えてくれた。

(本稿は、『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』に関する書き下ろし記事です。)

【執筆者プロフィール】
横山信弘(よこやま・のぶひろ)

企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。