昨年から新NISAがスタートしたが、投資にはトランプ関税の影響など「不確定要素」がつきものだ。一体どうすれば、不運な目に遭わずに投資で成功できるのか?
そこで今回は、「読むと人生が変わる」「『金持ち父さん 貧乏父さん』以来の衝撃の書!」と絶賛されている、全世界40万部突破のベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(ニック・マジューリ著)を題材に、数々の実績を積み重ねてきた「絶対達成コンサルタント」横山信弘氏の目線から自己投資のヒントを探ってみた。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

「どうしてそうなる?」課長4人がコーチング研修受講後に部下3人が次々に転職! 一体なぜ?Photo: Adobe Stock

4人の課長が研修受講後に
3人の部下が謎の退職!

「え! また辞めた?」

ある老舗企業の営業組織で、異常事態が発生していた。
16人の部下のうち3人

「自分の本当のやりたいことが、わからなくなった」
「この職場では、本当のやりがいを感じられない」

と言って退職してしまったのだ。

しかも4人の課長が「コーチング研修」を受けた後に、次々と……である。

なぜこのような事態が起きたのか?

そこで今回はスキル開発の難しさ、ストレスなく習得できるテクニックについて解説したい。

資産運用と同じ発想で自己研鑽することが重要なのだが、そのコツなどにご興味がある方は、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

表面的なコーチングスキルだけの危険性

優れたスキルだと注目されるコーチング。確かに効果的に活用できれば、部下の成長や組織のパフォーマンス向上に大きく貢献するのは間違いない。

一方、コーチングの本質を理解せず、テクニックだけを学んで実践すると、思わぬ結果を招くことがある。

先述した営業組織では、まず部長が「2日間のコーチング研修」を受けた。

その部長が、さっそく部下に対してコーチングをしてみたところ、見違えるように成長した。ドンドン成果を出すようになったのだ。

そこで4人の課長に「君たちもコーチング研修を受けて、部下育成に活用しなさい」と強く勧めたのだ。

すると、冒頭に書いた通り、とんでもない事態が発生した。

課長たちは研修で習った通りに、

「君の本当に何をやりたいことは何だ?」
「もしも君が、お金も時間も自由に使えたら何をするだろうか?」

といった質問ばかりを繰り返したせいかもしれない。
課長たちのコーチングを受けた部下は、こぞって

「今の仕事は自分に合っていないのではないか……」
「もっとやりたいことがあるのではないか……」

と迷い始めたという。

なぜ、こんな異常事態が発生したのか?
理由は簡単だ。

「2日間の研修」だけで、この部課長たちは、コーチングスキルが手に入ったと勘違いしたせいだ。

自己投資における「即一括投資」の重要性

コーチングスキルに限らず、新しいスキルを身につける際の考え方として、『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』に書かれた「即一括投資」はとても参考になる。

本書では、金融投資における「即一括投資」と「分割投資」の比較がなされている。「即一括投資」とは投資資金全額を一度に投資することだ。

本書では、「投資資金を全額今すぐ投資することが重要」と書かれてある。
一方、「分割投資」とは、時間をかけて少しずつ投資すること。一定期間、同額を投資していくスタイルが多い。

本書には、1997~2020年にわたってS&P500に12か月単位で投資した場合の違いが詳細に描かれている。これによれば「即一括投資」のほうが「分割投資」より平均して年4%ほど高いリターンをもたらす。そして全体の76%のケースで「即一括投資」が優位だったという。

なぜコーチングスキルを身につけるには「即一括投資」が適しているのか?

このような投資の原理は、実はスキル習得にも当てはまる。
コーチングのような複雑なスキルを身につけるには、少しずつではなく、集中的に学び、実践することが重要なのだ。

ある社長が「コーチング研修は参考になった」と言うので内容を聞いてみたところ、

「コーチングとメンタリング、カウンセリングとティーチングの違いがわかった」

程度のことしか言わなかった。これは単なる「気づき」でしかない。

コーチングのスキルを身につけるには、最低でも土台として、共感力、傾聴力、質問力が必要だ。
特に質問力は相当なトレーニングをして身につけなければならない。

心理学の知識も必要だ。相手の言動のみならず、表情や呼吸の変化などを洞察できる力も鍛えなければならない。

もちろんコーチは、自分自身の情緒安定性がきわめて大事。高いレベルで感情コントロールもできなければならない。

先述した営業部長が「コーチングのおかげで、部下が急成長した」と喜んでいたが、それは単に部下が優秀だっただけだ。

「年に2回、コーチングの研修を継続的に受けています」

と言い張る人がいた。
しかしそれは「分割投資」のようなものだ。

私がシステムエンジニアになったとき、会社は半年間の研修期間を設けてくれた。
そこで集中的に情報処理技術、プログラミング、システム設計などを学んだ。
これは「即一括投資」の好例だ。

税理士や会計士も同様である。
仕事をしながら少しずつ知識を身につけるのではなく、まずは資格取得のために集中的に勉強し、基礎力を徹底的に養う。そして業務を通じて学びながら、専門研修も受け続けるのだ。

ほとんどのスキルは「分割投資」だと習得しづらい

コーチングに限らず、新たなスキルを身につける際は「即一括投資」の姿勢が重要だ。
自分の持っている時間や労力をふんだんに使い、集中的に基礎を学ぶべきである。

徐々に勉強すればいい、少しずつ時間を使えばいいという「分割投資」的なアプローチでは、結局はスキルが身につかないことになりがち。現在多くの人がリスキリング(学び直し)に取り組んでいるが、少しずつ時間を使って学ぶよりも、集中的に学ぶことを心がけたほうがいいだろう。

まとめ

コーチングは確かに素晴らしいスキルだ。しかし表面的な理解で使いこなせるものではない。
本当に身につけたいなら、腰を据えて学び、十分なトレーニングを積むことだ。

昨今注目を集めている「ポータブルスキル(業種や職種が変わっても持ち運びが可能なビジネススキル)」もそう。

仮説思考やクリティカルシンキングも、よほど才能がない限り、今持ち合わせているすべてのリソース(時間と労力)を注ぎ込むのだ。

どんなスキル開発でも、「即一括投資」の姿勢で取り組むことを強くおススメする。

(本稿は、『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』に関する書き下ろし記事です。)

【執筆者プロフィール】
横山信弘(よこやま・のぶひろ)

企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。