無電柱化は、災害時における緊急輸送路や避難路の確保に直結し、電線の切断・感電リスクを防ぐ効果もあります。都市部のみならず、地方や沿岸地域においても、「命を守るインフラ」として、計画的かつ予防的な無電柱化の推進が求められています。

──受注が増えた要因はありますか?

村山 当社は、電線管理者の施工会社以外で、電線共同溝工事に対応できる数少ない民間施工会社として、独自の技術と体制を整えています。16年の無電柱化推進法施行を機に、国が無電柱化に本腰を入れたことで、当社の受注は着実に増加しました。

 国交省が中心となって無電柱化の推進を行っており、電線管理者にも協力を求めていますが、各社とも粛々と取り組んではいるものの、積極的とはいえないのが現状です。

 現在は、電線管理者が単独で行う地中化(単独地中化)が増えており、電力・通信各社が個別に工事を進める場面も出てきています。

 当社は、無電柱化推進技術検討会の民間SWG(サブワーキンググループ)委員として、トレンチャー掘削機「アーストレック」や、地中探査技術を活用した低コスト施工モデルを提案。これらはNETIS登録および国の手引きにも反映され、電力・通信の大手施工会社からも技術的な引き合いが増えており、全国展開へと動き始めています。

──順調に成長されているようですね。

「無電柱化」工事のスペシャリスト 大地震の被害を減らす「予防防災」を推進無電柱化工事のビフォー(上)・アフター(下)。電柱がなくなるだけで、防災性も景観も一変する

村山 トレンチャーに多額の投資をしたので、回収していかなければなりません。高速道路や再生可能エネルギーの送電線工事でも活用していただきたいですね。

 今はトレンチャーの動画マニュアルを作ろうとしていて、空知信用金庫さんに協力していただき、デジタル関係の補助金を申請する予定です。空知信金さんは支店長さんが毎月のように顔を出してくれて相談に乗っていただけますし、集金もお願いできる。昔ながらのお付き合いができるのでとても信頼しています。

── 今後の抱負をお聞かせください。

村山 予防防災のための無電柱化は、現実にはなかなか進んでいません。電柱は所有主が自治体、電力会社、NTTと複雑で、それぞれ管轄する省庁が異なるので、手を付けにくいのです。

 しかし、大地震に備えるためには、無電柱化を国家レベルの事業として位置付け、トップダウンで取り組むことが欠かせません。その第一歩として、まずは無電柱化のモデル地区をつくれるよう、働きかけていきたいと考えています。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2025年6月号掲載、協力/空知信用金庫

事業内容:電気通信設備工事の設計・施工・管理(無電柱化工事等)
従業員数:38人
売上高:8億7268万円(2024年3月期)
所在地:北海道札幌市西区八軒十条西12‐2‐58
電話:011‐613‐7611
URL:chouei-t.com