
米自動運転トラック大手トゥーシンプルは、今後は提携先の中国企業と秘匿性の高い技術を共有しないと米政府に確約した1週間後、中国国有企業に大量の重要データを移転した。
「彼らは細かい情報をたくさんほしがる」。トゥーシンプル・ホールディングスの米国従業員シャオリン・ハン氏は同僚にこう話した。中国商用トラックメーカー大手の福田汽車は、トゥーシンプルが米テキサス州で実施した多くの試験走行のデータを求めてきた。ハン氏は2022年2月にチャットで、「かなり時間を取られる」と語っていた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はこのやりとりを確認した。
カリフォルニア州サンディエゴに本社を置くトゥーシンプルは、中国の実業家から資金提供を受けて中国人起業家2人が創業。アリゾナ州で運転手なしでトラックを80マイル(約128キロメートル)走行させることに成功した。
同社は米国の公道で達成した技術的成果などを中国の提携企業と共有していた。これまで報じられていなかった数百ページに及ぶ同社内部のやりとりをWSJが確認した。
1年半もたたずにトゥーシンプルは自ら米国事業を閉鎖し、トラックを競売にかけ、ナスダックへの上場を廃止した。法的文書によると、経営陣は米国の投資家から調達した多額の資金を同社の口座から中国に移し、新規事業を立ち上げた。

PHOTO: CASSIDY ARAIZA FOR THE WALL STREET JOURNAL
トゥーシンプルの技術移転とそれに続く政府の慌てぶりは、外資誘致を後押ししつつ米国の技術を保護する米国法の弱点を浮き彫りにした。米国はこれを教訓に、中国とつながりがある企業に対する規制見直しを進めている。