
カメラで取得したデータを基に、AIが状況判断、運転操作まで全て担う自動運転システム「End-to-End(E2E)」を手掛けるのがチューリングだ。米テスラが同様の技術を採用しているほか、中国勢も開発に乗り出すなど、自動運転の領域において主流になりつつある。特集『車載ソフト大戦争』の#5では、業界が注目するE2Eの優位性とチューリングの実力を解明する。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
AIが操作するE2Eモデルのメカニズムとは
テスラが採用し脚光、世界で投資加速
ソフトウエアがクルマの価値を決めるソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)の開発を巡って、車載OS(基本ソフト)や電気自動車(EV)に搭載するバッテリーと同様に競争領域となっているのが自動運転技術だ。
これまで米テスラをはじめとする海外勢を中心に開発競争が進み、日本勢は遅れ気味だった。そんな中でも独り気を吐くのが、ベンチャー企業のTuring(チューリング)だ。
将棋AI(人工知能)ソフト「Ponanza(ポナンザ)」を開発した山本一成氏らが2021年に設立した会社で、現在はEnd to End(E2E)と呼ばれる方式の自動運転のソフトウエアや生成AIの開発を手掛けている。
E2Eの仕組みは、人間があらかじめ設定したルールに従って走行する従来のルールベース方式と異なり、カメラから取得したデータを基にアクセルやブレーキ、ハンドリングといった操作をAIが判断して運転する。走行したことのない場所でも人間のように事故の可能性を予見して未然に防いでくれるのが特徴だ。
23年にテスラが自動運転支援システム「フルセルフドライビング(FSD)」にE2E方式を採用したことで脚光を集め、中国の新興EVメーカーを中心にE2Eの開発に向けてこぞって投資を加速させている。
次ページでは、日本の大手自動車メーカーを含めた各社の開発状況を比較しながらチューリングの自動運転技術の優位性について明らかにする。