車載ソフト大戦争#1Photo:NurPhoto/gettyimages

トヨタ自動車の車載OS「Arene(アリーン)」に続き、ホンダが今年1月に「ASIMO(アシモ)OS」を発表した。アシモは2026年に販売する新型モデルに実装する計画だ。日本勢はソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)で先行する中国BYDや米テスラに追い付き、覇権を握ることができるのか。特集『車載ソフト大戦争』の#1では、業界の勢力図を明らかにするとともに、トヨタとホンダの「勝ち筋」に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

ホンダが車載ソフト「アシモOS」を発表
国内はトヨタとホンダの2陣営に集約

「クルマがユーザーのことを考え尽くし、『超個人最適化』する」。今年1月、米国ネバダ州ラスベガスで開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で、ホンダの電動事業開発本部長を務める井上勝史執行役専務は、同社が手掛ける次世代電気自動車(EV)の強みをこう強調した。

 報道陣に公開されたEV「SALOON(サルーン)」の量産モデルは、昨年発表されたプロトタイプの斬新なデザインはそのままに、都会的でスポーティーなクルマに仕上げた。

 今回、サルーンの発表に合わせてホンダが開発を進めてきた車載OS(基本ソフト)の詳細を公表した。ホンダが開発していたヒト型ロボットから名付けられた車載OS「ASIMO(アシモ) OS」は、クルマの司令塔として今後実装される自動運転技術や先進運転支援システム(ADAS)をコントロールする役割を担う。

 車載OSは2026年に発売するサルーンに搭載される予定で、井上氏は「世界中の皆さまに驚きと感動を与えて、次世代EVの象徴となることを目指す」と訴えた。

 クルマに搭載する半導体についても、日本の半導体メーカーであるルネサスエレクトロニクスと協業し、消費電力を抑えながらAI処理能力に優れた専用半導体を20年代後半に向けて開発していくと明かした。

 日系自動車メーカーで車載OSを手掛けているのはホンダだけではない。車載OSで先行するのはトヨタ自動車だ。

 トヨタは子会社のウーブン・バイ・トヨタが車載OS「Arene(アリーン)」の開発を担っている。米グーグルから招聘したエンジニアのジェームス・カフナー氏が最高経営責任者(CEO)を退任するなどの混乱が一時あったが、25年3月期には1.7兆円をEVやAIなどの成長領域に振り分け、早期の実用化を目指している(詳細は『トヨタが業界騒然人事!次世代EVソフト開発でグーグル出身技術者を見切り、デンソーを頼った裏事情』を参照)。

 日本国内でのSDVを巡る開発競争は、トヨタ陣営とホンダ陣営に集約されつつある。だが、先行する米国や中国の自動車メーカーとの競争に打ち勝つことができるのだろうか。次ページでは自動車業界の勢力図を公開し、トヨタとホンダの勝ち筋はどこにあるのかを探る。