セールスフォース、AI競争で時間稼ぎの買収Photo:Smith Collection/Gado/gettyimages

 米顧客情報管理(CRM)サービス大手セールスフォースにとって、直近の買収では時間が味方した。だが人工知能(AI)の時代にそれは長くは続かないだろう。

 クラウドソフトウエアのパイオニアであるセールスフォースは27日、企業向けデータ管理サービスのインフォマティカを80億ドル(約1兆1500億円)で買収することで合意したと発表した。買収額は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が買収に関する両社の協議を最初に報じた1年余り前のインフォマティカの時価総額を約27%下回る。両社とも、その後に事業成長率が大幅に鈍化しており、これが交渉再開のきっかけとなった可能性がある。

 両社はまた、企業顧客が貿易戦争と景気後退に陥る可能性を受けて支出を精査する中、一段と不透明な環境に直面している。セールスフォースが28日午後に発表する2-4月期(第1四半期)決算では、売上高の伸びは前年同期比7%未満にとどまる見込みだ。これは同社にとって過去最低の伸び率となり、長年にわたって安定的に達成してきた2桁台の成長からの顕著な減速となる。事業規模がはるかに小さいインフォマティカは今月、4-6月期(第2四半期)の売上高が横ばいになるとの見通しを示した。

 統合によってこれらの課題が直ちに解決するわけではない。だが、インフォマティカのデータ管理ソフトツールはセールスフォースのAIサービス「エージェントフォース」の品質向上に役立つとして、市場関係者は今回の買収を好感している。人に代わって特定の行動を取れるチャットボットであるAIエージェントは、顧客に生成AIサービスを販売しようとする法人向けソフト提供企業の間で大きな注目を集めている。