
全体の1%の人々を相手に商品を売っている超高級ブランドは、経済情勢にかかわらず安定した売り上げを享受できるはずだ。だが現状はそうなっておらず、その原因は各ブランドの価格設定にあるかもしれない。
世界最大の高級ブランド企業である仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの傘下にあるクリスチャン・ディオールは、今年1-3月期の売上高が驚くほど大幅に落ち込んだ。LVMHはディオール単体の売上高を公表していないが、ディオールの業績がLVMHのファッション・皮革製品部門全体の業績より悪かったと述べた。同部門の売り上げは前年同期比5%減だった。
仏シャネルもつまずいた。非公開企業だが、オーナーらは過去8年間、毎年の業績を公表してきた。同社は先週、2024年の売上高が4%減少し、営業利益がほぼ3分の1減ったと発表した。
一方で、ハンドバッグの「バーキン」を製造する仏エルメスと、カルティエを擁するスイスのリシュモンは依然、堅調な伸びを見せている。1-3月期の売上高は両社とも前年同期比7%増加した。
これら4社はいずれも高級ブランドのトップクラスに位置しており、高級ブランドに憧れる消費者層(つまり、景気が悪化すると減りやすい層)の支出からほとんど影響を受けないと考えられている。だが、4社の価格設定のアプローチは異なっている。
高級ブランド各社はコロナ下で値上げに着手した。当時は貯蓄が余分に増えたことで高級品に対する需要が急増していた。バーンスタインの分析によると、各ブランドは2020年から23年の間に価格を平均36%引き上げた。この値上げ幅は当時の米国の総合インフレ率のほぼ2倍に当たる。