高級ブランド、ドル安と金価格高騰で逆風強まるPhoto:Kevin Carter/gettyimages

 関税の直撃だけでは、まるで災厄が足りないかのようだ。不安に駆られた投資家がドル売りや金(ゴールド)の買いだめに走っているため、米国人が高級ブランド店で買い物をすれば、以前よりも高くつく見通しが強まっている。

 ドルは4月2日以降、対ユーロで約5%下落した。投資家は景気見通しが悪化すると通常はドルを買うため、ドルの下落には意外感があった。ドナルド・トランプ米大統領が課した145%の対中関税が中国経済に与える影響への懸念から人民元も売られ、対ユーロで5%程度下落した。

 こうした動きは欧州の高級ブランド各社にとって問題となる。ドルと人民元が強く、ユーロが弱い時に事業は好調なためだ。

 高級ブランドは商品をイタリアやフランスで生産しているため、コストはユーロ建てとなっている。ただ、販売先としては中国と米国の消費者が大きな割合を占めており、合わせて高級品業界の売上高の半分以上を生み出す。

 一方、投資家と中央銀行は金の購入を活発化させており、高級ブランドのさらなる悩みの種となっている。金価格は先週、1オンス=3300ドル(約47万円)を突破した。高級時計・宝飾店メーカーは上昇する投入コストを顧客に転嫁せざるを得なくなる。

 高級ブランド各社は利益率の悪化を防ぐため、米国と中国で値上げせざるを得なくなると思われる。トランプ氏は相互関税に関して90日間の発動停止を実施しており、欧州連合(EU)から米国への輸入品には現在、当初発表された20%ではなく10%の関税がかかっている。