
【ワシントン】ドナルド・トランプ米大統領の通商チームはプランBの準備を進めている。
トランプ政権が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に発動した広範な関税について、米国際貿易裁判所が今週、違法とする判断を下したことで、政権の関税戦略は揺らいだ。米連邦控訴裁判所は29日、トランプ氏の関税措置を無効とした下級審判決について、政権の異議申し立てを審理する間、一時的にこれを差し止める判断を下した。ただ、政府関係者は、関税を課すための新たな法的根拠を見つける必要性が生じた場合の選択肢を模索している。
こうした状況は、通商法の斬新な解釈に依拠したトランプ氏の積極的な貿易政策の課題を反映している。通常は議会から大統領に付与された権限の下に関税は発動されるが、トランプ氏のチームは包括的な関税を迅速に課すため、使われることがほぼない緊急権限を根拠とした。
事情に詳しい複数の関係者によると、こうした戦略が脅かされているため、トランプ陣営は二つの対応策を検討しているという。
一つ目は、1974年通商法で定義され、これまで一度も使用されたことがない条項に基づき、包括的な関税を課す応急的な措置で、他国との貿易不均衡に対処するため150日間にわたり最大15%の関税賦課が認められるというものだ。同条項を根拠に関税を課すことで、トランプ氏は主要貿易相手国ごとに個別の関税政策を策定するための時間を稼ぐことができるという。
二つ目は、長期間にわたる通告と意見公募が必要となるが、国際貿易裁判所に違法と判断された関税政策よりも法的に正当化しやすいものだとトランプ政権は考えている。同条項は、第1次トランプ政権による対中関税を含め、過去に何度も課税の根拠とされている。
関係者らによると、協議はまだ流動的で、トランプ政権は最終的な判断を下していないという。連邦控訴裁がトランプ関税を違法とした判断の効力を一時的に止める命令を出しているため、政権は代替案の実施を待つ可能性もある。