「自慢全開の文章を書いてくる相手」への対処法とは？
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか？』（ダイヤモンド社）を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。
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「自慢さん」をやっつける2つの方法
みなさんは、次のような「自慢全開の文章」を仕事で見かけたことはないでしょうか。
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●今回の企画書、実は徹夜で仕上げたんです。でも私、追い込まれたときのほうがいいアイデアが出るんですよね。クライアントさんからも絶賛いただきました！ （註：同僚から上司への報告。実際には、クライアントは絶賛していない）
●こないだ私も、某有名企業からヘッドハンティングのお話をいただいたんですよ。でも、今の会社が好きすぎて断ってしまいました。（註：自社のチーム内で退職者が出たことを伝えたときの取引先からの返信メール）
●A社の資料、日常的に勉強している分野だったので、サクッと書き上げられました。この業界の動向は楽しいですよね。（註：難しそうだねとチーム内で言っていた案件に対して、対応したメンバーが提出時に書いたチャット）
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こういうメールやチャット、見覚えがあるかもしれません。富裕層やインフルエンサーへの取材記事でもよく見かけますよね。
たしかに読んでいて気恥ずかしくなるというか、他人のストレートすぎる承認欲求って、見ていると共感性羞恥を覚えるものです。「あー！」と顔を手で覆いたくなる。まさに目も当てられない。
ただぼく自身も自慢話を書いてしまうことがあるのでわかるのですが、やっぱり自慢話を書く人って、自分のすごさを認めてもらいたいんですよね。ほめてもらったらもちろんうれしいけれど、そうでなかったとしても認知はしてもらいたい。だから自慢しているというより、「客観的事実を伝えているにすぎない」という感覚のほうが近いかもしれません。
とはいえ、自慢話をされたほうは「すごいですね！」といちいち言うわけにもいかない、というか面倒ですよね。そもそもほめ続けたところで自慢話をやめてくれるわけではないでしょう。
かといってダイレクトに「そういうのって自慢に見えるからやめたほうがいいですよ」とも言えませんよね。そんな勇気がある人はなかなかいないし、言ったら相手との関係が悪くなる可能性も十分にある。
じゃあどうすればいいのか。見て見ぬふりする以外にできることはあるのでしょうか？
対応策レベル1は「自慢話シェア作戦」です。
SNSでも記事でも、いい感じの自慢話を見繕って「こんなこと言って恥ずかしくないのかな」「コンプレックスの裏返しだよね、逆に心配になっちゃうかも」みたいに伝える。そこで「たしかに。自分も自慢話をしないよう注意しよう」と思ってもらえて解決に向かっていくのがレベル1です。
ただ他人の自慢話を見せても、こんなふうに切り返されるケースがあります。
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「でも、自分の強みとか実績を伝えるのって大事ですよね」
「日本人はアピール下手な人が多いから、むしろいいことに思えるけど」
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たしかに強みや実績を伝えること自体はいいと思うのですが、問題は「相手が求めている情報、ボリューム、伝え方なのか？」という思考が欠けていることですよね……と言い返せればいいのですが、それも難しいと思うのでレベル2の対応策を考えます。
レベル2は「自慢返し」です。これは上級者向けのメソッドで、相応のリスクをとることになりますが、「もうこの人から自慢話を二度と聞きたくない！」と思うなら、やってみる価値はあります。
やり方はシンプル。こちらも「自慢さん」に対してどんどん自慢を返していくのです。目には目を。自慢には自慢を。多少誇張してでも自慢返しをしてみる。あえてイタい人を演じてみるのです。
たとえば、「徹夜で仕上げた企画書がクライアントに絶賛された」という自慢をされたとしたら、「私もこの3日間、ほとんど寝てないんですよ！ でも『最近調子いいね』って部長にもほめられたんです！」みたいに切り返す。
こういうやりとりを何回か続けると、「自慢さん」の対応は3つに分かれていくと思われます。
1つめは「最近あの人、自慢が多いけど大丈夫かな」と心配になるとともに、自身の自慢にもブレーキがかかるパターン。これは問題解決したのでOKとしましょう。
2つめは「最近あの人、積極的になってすばらしいな」と前向きにとらえられてしまい、自慢をやめてくれないパターン。これは問題解決になっていないどころか、自慢の応酬が続く可能性があり、自分にとっても周囲にとっても地獄絵図になります。
3つめは「最近あの人、マウントをとってくるな（私のことなめてるな）」と警戒されて、人間関係が悪化するパターン。これも本末転倒というか、ポジティブな結果はもたらされません。ふざけた感じや思考停止で自慢返しすると、このパターンに帰着する可能性が高いので注意しましょう。
このように「自慢返し」は諸刃の剣です。成功する可能性はあるものの、初代ポケモンでいえばつのドリルくらいでしょうか。最終手段として心に留めておく程度が賢明かもしれません。
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』（22万部）など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行（40カ国）、バスケットボール観戦。
※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか？』庄子 錬（ダイヤモンド社）より一部を抜粋・編集して掲載します。
