
Photo: Manu Brabo for WSJ
工作員が敵地に潜入するスパイ活動は、古代ギリシャ人がトロイの市民に木馬を贈ったとされる話以来、戦争で重要な役割を果たしてきた。
近年、そうした作戦が戦略的な効果を持つことはまれだった。だが、イスラム教シーア派組織 ヒズボラに対するイスラエル情報機関の昨年秋の作戦 と、 ロシアの戦略爆撃機部隊 に対する今月初めのウクライナの作戦が、いずれも劇的なものだったため、21世紀にスパイ作戦が紛争の最前線に再び躍り出た。
イスラエルとウクライナの作戦は、ドローン(無人機)や通信ネットワーク、より小型で強力なバッテリー・爆発物などの技術進歩が、優れた諜報(ちょうほう)活動と組み合わさることで、戦争の行方を変える可能性があることを示した。
「今日のテクノロジーは多くの新しい可能性をもたらす。例えば、過去には乗り越えられなかった物理的な障壁の多くを回避できるようになり、敵の弱点を見つけられる範囲が広がった」。イスラエルの情報機関モサドの元上級部門長、エヤル・ツィール・コーヘン氏はこう話す。
一方で、同じテクノロジーの多くが敵側の能力も高める可能性があると同氏は言う。「常に双方向に作用するため、どちらが相手の弱点を巧みに突けるかにかかっている。テクノロジーにはそれを扱う優秀な人材が必要だ。テクノロジーは人間という基盤の上に成り立っており、その逆ではない」