頑張っているのに成果が上がらない。物価上昇に見合う実質賃金が上がらない…そんな悩める人たちにお薦めなのが、「読むと人生が変わる」「爆発的に広がっているストイシズムが身につく」と話題の世界的ベストセラー『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』(スコット・ギャロウェイ著)だ。今回は、本書を「お金の本と思いきや実はキャリア形成の必読書」と評する「絶対達成コンサルタント」の横山信弘氏の特別寄稿最終回をお届けする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

なぜ年収3倍に?
なぜ高卒で、資格もない42歳が転職で大成功したんだ……。
知人で、誰もが「よくそんな経歴で」と驚く人がいる。高卒、無資格、転職4回。それなのに42歳の転職を機に年収が3倍になった。しかも、まったくの未経験分野で成功したのである。
彼の成功の秘密は、投資の理論とよく似ている。
そこで今回は、学歴も資格もない40代が、転職で大成功する3つの特徴を解説する。これからのキャリア形成に悩む40代は、ぜひ最後まで読んでほしい。
40代転職の現況は?
まず、40代の転職事情について、簡単に紹介したい。
近年、40代の転職率は上昇しているようだ。
2022年には5.6%と過去最高を記録(2023年も同水準で推移)した。
企業が即戦力を求め、ミドル層の採用ニーズが高まっているのが背景だ。50代の転職も増えているが、やはり収入ダウンケースが目立つ。したがって、
「転職するなら40代で」
と考えている人が増えているからだろう。
とはいえ40代の転職で成功するのは、一部に限られるだろう。収入ダウンするケースも多い。
有名大学を出ていれば、同じ大学出身者が経営幹部にいたり、部課長として組織をまとめていたりするケースが多い。その「ツテ」を頼って転職することはできるだろう。
難関な資格、特殊な技能もあれば、さらに心強い。
「ちょうど半年前に、20年やってきたベテラン社員が家の事情で辞めてしまった。その代わりに、ぜひ当社にきてほしい」
と歓迎されるだろう。即戦力として期待されるからだ。
しかし、それらの要素がないと、なかなか厳しい。
「管理職経験がない」
「専門スキルが弱い」
「年齢的に扱いづらい」
企業側のこんな本音が、40代転職者を苦しめる。
実際、私のコンサルティング先でも、40代の転職組は苦戦している。前職より年収が下がった人が6割。期待されたポジションに就けなかった人も多い。
キャリアで成功するための「3つの特徴」とは?
では、なぜ彼は成功したのか。
キャリアで成功するためには、投資の理論がとても役に立つ。
スコット・ギャロウェイ著のベストセラー『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』をぜひ参考にしてほしい。本書に「投資の深遠な真理」が書かれている。
この言葉は、とても深い。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。
私は「長期投資」の考え方で、安定した目標達成を実現しようとする。したがって、
「とにかく売上をアップしたい。できる限り多く」
「できれば半年後、最低でも1年後には大きなリターンがほしい」
このような希望を持つ経営者とは、相性が良くない。「できる限り多く」「売上は多ければ多いほどいい」という表現を使って、アップサイドを最大化しようとする思考を持っているからだ。
このような近視眼的な思考は、投資の世界のみならず、経営の世界でも、キャリア開発においても結果的に大きなリターンは得られない。長期的な視点で考えると。
そのため投資の理論からしても、キャリア形成で成功するには、私は次の3つの特徴があると考えている。
(1)時間を味方につける
(2)分散投資を続ける
(3)複利効果に期待する
それでは、一つひとつ見ていこう。
時間を味方につける
やはり「時間」というリソースを味方につけることは重要だ。すべての人間に平等に与えられるリソースだ。待てば待つほど、このリソースは増えていく。何の努力も不要だ。これほど無視できないリソースなど他に存在しない。
前述した『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』にも、こう書かれている。
投資で成功する人の特徴は明確だ。目先の利益に飛びつかない。キャリア形成でも同じなのだ。
前述した彼も結果的に「時間」を味方につけた。
高校卒業後、建設会社に入社した。特別なスキルがなかったため経理を任された。数字に弱く、上司にバカにされながらも必死に簿記を覚え、7年仕事を続けた。
その建設会社が倒産したとき、彼は25歳になっていた。
経理の経験を活かそうとしたが、働き口は見つからず、最寄りのショッピングモールにあるアパレル店員になった。最初はアルバイトで、2年後には正社員になれた。32歳まで接客業を続けた。ファッションに興味はなく、接客は苦手だったが、それでもマジメに働いた。
結婚し、子どもも生まれた。ほどなくして「この給料では家族を養えない」と考え、広告代理店でデザイナーのアシスタントに転職。Web関係も手伝ったが、ほぼ未経験。35歳まで続けたが芽が出なかった。
その後IT企業で営業職に就いた。イベントを企画し、名刺交換し、テレアポを繰り返し、企業を訪問してサービスを売り込む日々。成績は平凡だったが、なんとか家族4人が暮らせる程度にはなった。
一見すると、どれも中途半端に見える。しかし、これらすべてが42歳での成功の布石だったのだ。長い時間をかけて、かけがえのないリソースを手にすることになる。
分散投資を続ける
「卵を一つのカゴに盛るな」。投資の格言である。『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』には、こう書かれている。
彼のキャリアもまさに分散投資だった。
経理、接客、デザイン補助、法人営業……。バラバラに見える経験が、実は貴重な資産になっていた。
42歳のとき、IT営業で知り合った物流会社から声がかかる。「うちにこないか」と。
「また未経験の業界……。悪い話ではないが、リスクが大きい」
彼はそう思った。しかもすでに42歳になっていた。
しかし熱心に勧められ、悩んだ末、彼は飛び込んだ。
その物流会社は大手企業向けのロジスティクスシステムが強みだった。引き合いは多いが、まとめる人材がいない。そこで彼の出番となったのだ。
アパレルで磨いた対人能力。IT企業で身につけた法人営業のスキル。デザイン補助で学んだ構造的思考。そして経理で叩き込まれたコスト管理能力――。これらの経験とスキルすべてが活きたのだ。バラバラだった経験が、一つに結実したのだ。
これはまさにスティーブ・ジョブズの名言である「コネクティング・ザ・ドッツ」と言えよう。点と点がつながったのだ。
複利効果に期待する
投資における最強の武器は複利である。
時間×分散×複利で、資産は驚くほどに増える。
再び『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』から引用したい。
世界屈指の投資家であるウォーレン・バフェットの全資産の99%は、複利効果によって52歳以降に得られたものだ。
彼のキャリアも同じだった。
(1)経理経験によるコスト意識
(2)接客経験による対人スキル
(3)デザイン経験による構造化能力
(4)営業経験による交渉力
これらが掛け合わさり、総合的なビジネススキルとなって大きな武器になった。
単なる足し算ではない。掛け算である。
物流会社では、これらの能力がシナジーを生んだ。
接客業で鍛えた表情筋で、重要な取引先のキーパーソンと関係を築き、法人営業の経験を活かしてスムーズに交渉を進めた。
コスト意識が高いため、お客様の予算内で最適なシステムを提案することもお手のものだった。
42歳にして、ようやく本領発揮である。すぐに頭角を現し、3年後には事業部長になった。年収は入社時の3倍になった。
まとめ
多くの人がすぐに結果を求める。つまりアップサイドを最大化しようとするのだ。
しかし複雑性の高い現代では、もっとディフェンス能力を鍛えよう。
若い頃にいろんなことにチャレンジし、自分の強みを見つける。そして適切なタイミングでリソースを集中(フォーカス)させるのだ。
人のキャリアも資産形成も、同じ投資理論が当てはまる。
時間を味方につけ、リスクを分散し、複利効果を狙う。
学歴や資格がなくても、この3つがあれば必ず道は開ける。
私もそうだ。学歴もなく、35歳までダメ会社員だった。
しかし40歳を過ぎてから素晴らしい出会いがあり、出版までさせてもらえるようになった。40代の転職は確かに厳しい。だが、点と点をつなぎ、過去の経験を活かそうとすれば、必ず道は開けるだろう。
ぜひとも今回紹介した『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』で複利の偉大さを体得してほしい。
(本書は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』に関する書き下ろし特別投稿です)
企企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。