【マンガ】「ザマミロ」ってアナタ鬼ですか?取引先が仕組んだ「エゲツないワナ」にイライラが止まらない!『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営について解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第17回では、商売における理詰めと感情のバランスについて解説する。

激安競争するライバル企業がハマる罠

 紆余曲折あったが、見事に人気格闘技イベント「豪腕」のグッズ販売に参画した主人公・花岡拳たち花岡企画のメンバー。その報告を受けた出資者・塚原為ノ介は、「相手を怒らせて取引にもっていくとは……こんな発想、普通の商売人にはないよ」と型破りな花岡の手法を評価するのであった。

 しかし塚原の話はそこで終わらない。取引先である一ツ橋物産・井川泰子が今後さらに法外な交渉を仕掛けてくる可能性についても懸念する。ただ、井川が感情的なビジネスを仕掛けてきていることから、「商売というのは理詰めの世界」「相手が感情的であればあるほど、冷静さを欠いてスキが生まれる」とアドバイスするのだった。

 塚原は一例として、競合店同士の激安対決について語る。激安競争は典型的な感情のぶつかり合いであり、本来経営者ならば、競合と違う戦い方を選ぶべきなのに意地や感情で競争にとらわれてしまっていると論じる。

 以前にも塚原は「商売は理詰め」と語っており、今回のアドバイスも一貫した話だ。しかし塚原は、取引を始めるときだけは「理屈ではなく、気分や感情を大事にせよ」と語るのだった。

アマゾン創業者がホレこんだ企業とは?

漫画マネーの拳 2巻P187『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

 塚原は次のように言葉を続ける。

「この人と取引をしよう、商売を始めようと思わせるきっかけはなにか。それは相手とウマが合うか合わないか……もっといえば好きか嫌いか、それだけだよ」

 花岡と井川はお互いに最悪の印象を持っており、さらには井川の法外な要求……いわば売られたケンカを花岡が買ったことで取引が始まることになったが、塚原に言わせればそれこそが「お互い人間的に魅力を感じているから」だと指摘した。

「いいかね…商売は恋愛と同じ。相手に自分をホレさせたら勝ち…。ホレたら平常心を失う、ガードも甘くなる」

 15年以上前、アマゾンは靴のECサイトを運営していたザッポスという企業を買収した。アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスはハードワークから始まり、アマゾン流の仕組み化・効率化で事業を拡大してきた。だがこのザッポスだけは、買収時にその企業文化をそのままに傘下に取り込むとして、話題になった。

 ザッポスは1年以内の返品無料、徹底したホスピタリティを持つコールセンターなど、いわば効率化とは真逆の企業文化でユーザーの心をつかみ、当時は難しかった靴のECという領域で大きく成長していた企業だった。

 日本でもその後、近しいコンセプトのEC企業が立ち上がったが、そういった文化を継承したままで成長したという話は聞いたことがない。

 ザッポスは今もAmazonのサイトに吸収されることなく、独自ドメインで事業を継続している。アマゾンとは真逆の文化を持った企業は、ベゾスにとって今も魅力的なのだろうか。

 塚原のアドバイスとは裏腹に、井川の「嫌がらせ」を耐え忍ぶ時間が続く花岡たち。次回はさらなる試練が彼らを待ち構える。
 

漫画マネーの拳 2巻P188『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 2巻P189『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク