解析の結果、自転車単独および自転車と他の移動手段を併用していた群では非活動的移動手段を利用していた群と比べて認知症リスクが19%(調整ハザード比0.81、95%信頼区間0.73〜0.91)、アルツハイマー病リスクが22%(同0.78、0.66〜0.92)、有意に低下していた。一方、徒歩で移動していた群ではアルツハイマー病リスクがわずかに上昇していた(同1.14、1.01〜1.29)。

 研究グループは、「この結果は、活動的な移動手段、特に自転車の利用の促進が中高年の認知症リスクの低下につながる可能性があることを示唆している。認知機能の維持のために利用しやすく持続も容易な習慣を奨励することで、公衆衛生に大きなベネフィットがもたらされる可能性がある」と述べている。

 ただし、自転車利用と認知症リスクの関連には、遺伝的素因(APOE ε4)保有の有無が影響することも示された。具体的には、自転車単独および自転車と他の移動手段を併用していた群の中でAPOE ε4を持たない人では認知症リスクが26%、遅発性認知症リスクが25%有意に低下していたが、APOE ε4を持つ人では、リスク低下は統計的に有意ではなかった。

 さらに、脳のMRIスキャンデータが利用可能だった4万4801人を対象に、移動手段と脳構造との関連を調べた結果、自転車の利用は海馬の体積が大きいことと関連していることが明らかになった。このほか、興味深いことに、車の運転は公共交通機関の利用と比べて、認知症に対してある程度の予防効果があることも示唆された。

ウォーキングよりも複雑な
脳機能を必要とする

 本研究をレビューした米ノースウェル・ヘルス老年医療サービス部長のLiron Sinvani氏は、「自転車に乗ることは中等度から高強度の運動であり、バランス感覚も必要だ。ウォーキングよりも複雑な脳機能を必要とするため、認知症リスクの低減効果が高いと考えられる」と述べている。

 同氏はさらに、「単に、運動を習慣化すればいいわけではなく、どう生活するかを考えることが大切だ。つまり、どこかへ出かける際には車ではなく自転車を使うというように、活動的な移動手段をライフスタイルの一部として取り入れることが非常に重要になる」と述べている。

 ただしこの研究は観察研究であり、自転車の利用と健康的な脳の老化の因果関係が明らかにされたわけではない。それでもSinvani氏は、「認知症のリスクを減らすための方法について患者や家族、友人から尋ねられるたびに、私は、『外に出て何かをするべきだ』と伝えている。身体活動だけでなく、バランス感覚を維持し、脳のさまざまな部分を活性化させることが大切だ」と話している。(HealthDay News 2025年6月11日)

https://www.healthday.com/health-news/senior-health/biking-might-promote-healthy-brain-aging

Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.