
睡眠中の脳に
カフェインはどう作用するのか
- 朝のコーヒーは活力をもたらしてくれるが、夜にコーヒーを飲んで眠りにくくなったことはないだろうか。新たな研究で、カフェインは睡眠中の脳の電気的信号の複雑性を増大させ、「臨界状態」に近付けることが示された。
- 臨界状態とは秩序と無秩序の境目にある状態で、脳が外からの刺激に最も敏感に反応し、最も適応力が高く、情報処理の効率も最大になると考えられている。
- モントリオール大学(カナダ)のPhilipp Thölke氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications Biology」に4月30日掲載された。
- Thölke氏らは40人の健康な成人を対象に、脳波計(EEG)と人工知能(AI)を用いて、睡眠中の脳に対するカフェインの影響を分析した。試験参加者は、就寝前にカフェイン200mg(コーヒー1〜2杯に相当)を含んだカプセルまたはプラセボを摂取した。
- その結果、カフェインは脳の電気的信号の複雑性を増大させ、それにより神経活動はより多様で柔軟になることが示された。
- また、カフェイン摂取により脳活動のパターンは臨界状態に近付き、脳の電気的リズムにも顕著な変化が見られた。具体的には、精神的な集中や覚醒状態に関係するベータ波は増大する一方で、回復に導く深い睡眠に関係するシータ波やアルファ波などのより遅い脳波は抑制されることが明らかになった。
- こうした変化は、特に、記憶の定着と認知機能の回復に重要なノンレム睡眠中に顕著であった。