中国がAI覇権争いで猛追、米国の優位揺るがすILLUSTRATION: EMIL LENDOF/WSJ, ISTOCK

 人工知能(AI)分野で中国の企業が世界的に米国の牙城を切り崩している。米国の優位性を揺るがしており、AIを巡る競争は激化するとみられている。

 欧州や中東、アフリカ、アジアでは多国籍銀行から公立大学に至るまで幅広いユーザーが、米オープンAIの「チャットGPT」など米国のAIに代わるものとして、新興企業ディープシークや電子商取引大手 アリババグループ といった中国企業の大規模言語モデルの採用に動いている。

 事情に詳しい関係者らによると、多国籍銀行では、HSBCとスタンダードチャータードがディープシークのモデルを社内で試験的に使い始めた。また、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは最近、旗艦データセンター向けにディープシークを採用した。

 ディープシークを巡っては、データセキュリティーを巡る懸念から米ホワイトハウスが一部の政府機関の端末での同社アプリの使用禁止に動いている。それにもかかわらず、アマゾン・ドット・コムのクラウド部門アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、マイクロソフト、グーグルなど米国の大手クラウドサービスプロバイダーは顧客にディープシークを提供している。

 消費者向けAIチャットボット(自動会話プログラム)の中では、チャットGPTは依然として世界で圧倒的な存在感を示す。調査会社センサータワーによると、チャットGPTは世界で9億1000万回ダウンロードされているのに対し、ディープシークは1億2500万回にとどまる。米国のAIは、計算用半導体や最先端の研究、資金調達へのアクセスといった面での優位性により、業界最高峰として広く認識されている。