トランプ氏の海運復興計画が失速Photo:VCG/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領は2期目最初の主要な議会演説で、米国の造船業を復活させると約束した。

 それから4カ月がたち、米海運業の長年の衰退を反転させるというトランプ氏の野心的な計画は失速している。

 政府効率化担当チームは、米国船籍の商船に必要な貨物を供給している海外向け食料支援プログラムを停止させた。ある上院共和党幹部は、軍用船建造のための予算が削られていると警告している。海運政策の調整のために新設された部署のスタッフは7人から2人に削減された。

 海運業界の幹部らは、海運業の基盤拡大を望むトランプ氏の姿勢に疑念は抱いていないと話す。最近表面化している一連の問題はトランプ政権内の相反する政策が図らずも招いた結果だとみている。

 共和、民主両党は米海運業の復活を、中国の台頭に対抗するための経済・安全保障面の優先事項と見なしている。両党とも、軍艦の建造を増やすとともに、米船籍の民間のコンテナ船やばら積み貨物船と乗組員の数を拡大したいと考えている。こうした商船は大規模な軍事作戦の支援に必要となる。

 米国の海運各社は食糧支援プログラムの削減が業界に打撃を与えていると指摘する。政府効率化省(DOGE)が国際開発局(USAID)を閉鎖したことで、「フード・フォー・ピース(平和のための食糧)」プログラムは事実上停止状態になった。同プログラムが提供する貨物は米国の海運会社にとって重要な収入源だった。一部の業界関係者は、同プログラムが別の政府機関の下で早期に復活しなければ、係船作業や船員の解雇を始めなくてはならなくなると警告している。

 トランプ政権に同プログラムを救済する計画はない。ある政権高官は同プログラムには無駄が多いとの認識を示し、議会にはこれを農務省に移管しようとする動きがあるものの、国務省が「責任を持って幕引きを図ることに注力している」と話した。

 造船計画に関する懸念もある。上院軍事委員会の委員長を務めるロジャー・ウィッカー上院議員(共和、ミシシッピ州)は6月10日の公聴会で、政権の来年度の海軍の予算要求額に落胆したと述べた。特に造船予算が今年度の370億ドル(約5兆3000億円)から210億ドル以下に削減された点を指摘した。