
【シンガポール】米国とベトナムの関税協定は、ホワイトハウスがグローバル貿易を巡る慌ただしい交渉で特に重視している課題を浮き彫りにした。すなわち、中国製品が米国に入ってくる迂回(うかい)ルートを全て遮断することだ。
ドナルド・トランプ米大統領が2日に発表したベトナムとの合意で重要なのは、ベトナムで「積み替えて」米国に輸入されるモノに対し、40%の懲罰的関税を課すとしたことだ。同氏がベトナムからの通常の輸入に適用するとした税率20%の2倍に当たる。
トランプ氏は中国を名指しはしなかった。迂回の定義や取り締まり方法も詳細は不明だ。それでもアナリストらはこの措置について、企業がベトナムを経由して商品を米国に出荷し、中国からの輸入品に通常課される高関税を回避するのを困難にするのが真の狙いだと指摘する。
米国は中国と、もろさも透ける貿易「停戦」にこぎつけ、他の貿易相手国とは協議を続けているが、引き続き中国が通商政策の焦点であることがうかがえる。
ベトナムとの合意が示唆するのは、他の国も米国への輸出を続けたければ、自国経済における中国の存在感を制限するよう求められる、ということだ。英国は最近米国と結んだ貿易協定で、サプライチェーン(供給網)のセキュリティーを強化することで合意した。これも標的は中国だとされる。
「中国の輸出品が迂回ルートを通じて米国市場に入ってくるのを実質的に制限するという、米国の戦略的な意図があるようだ」。HSBCのアジア部門チーフエコノミスト、フレデリック・ニューマン氏(香港在勤)はこう指摘した。