トランプ大型法案、当面は景気浮揚もリスクは後ろ倒しIllustration: Rachel Mendelson/WSJ, iStock (4)

 ドナルド・トランプ米大統領の3兆4000億ドル(約490兆円)規模の「大きくて美しい」税制・歳出法案を巡り、大きな議論が巻き起こっている。だがエコノミストの間では、経済への影響は当初控えめで、大半の人々が気付かない程度にとどまるとの見方が広がっている。

 法案では今年から軍事費と国境警備費が増額される。チップ収入や残業収入のある納税者、65歳以上の納税者の多くは早ければ今年から減税の恩恵を享受する。法案に盛り込まれた条項により、2027年からメディケイド(低所得者向け公的医療保険)の給付対象から数百万人が除外されることで支出削減も見込んでいる。フードスタンプ(低所得者向け食料支援)も同様。

 だが3兆4000億ドル相当の法案の柱となるのは、12月31日に期限切れとなる2017年成立の減税・雇用法(TCJA)の条項延長だ。延長は減税が最初に施行された時やジョー・バイデン前大統領が21年に行った景気刺激策のように、個人や企業の行動を変えることはないとみられる。

 これはマクロ経済にとってはプラスだ。増税を回避できればトランプ氏の通商・移民政策による逆風に直面している経済への足かせが一つ減ることになるからだ。

 JPモルガン・チェースの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は法案について、「大部分は現行政策の継続で、その他で議論されているものは大きな数字ではない」と指摘する。「国内総生産(GDP)やマクロ経済を語る場合、影響を及ぼすには大きな数字が必要だ」と述べた。