「仕事は、結果がすべてだ」
いま、そんなメッセージを伝える本が注目されている。それが、ビジネス書『ベンチャーの作法』だ。ベンチャー転職支援のプロであり、1.1万人以上のキャリア相談、4000社以上の採用支援の経験がある高野秀敏氏が、ベンチャー流の「結果を出す働き方」をまとめた。時代と逆行するようなストイックな内容だが、「今の時代に、ここまで忖度なく本質を教えてくれる本はない」と、ベンチャー企業の社員や経営者のみならず、大手企業で働く人にも注目されている。
デジタルマーケティング事業で成長中のWEB広告代理店「インフィニティエージェント」の代表・岡田裕平氏も、本書に共感した読者のひとり。社内のマインドセット構築に同書を活用しているという岡田氏に、著者の高野氏と共に話を聞いた。(ダイヤモンド社書籍編集局)。

「ベンチャー企業のほとんどは内部要因による自滅的な失敗をします」
岡田裕平(以下、岡田) どこかで聞いた話ですが、ベンチャー企業のほとんどって競合他社に潰されるんじゃなくて、「自滅」するんですよ。
結局、経営とは「組織」と「戦略」に二分されると思っていて、そのうちの「組織」が作れないケースが多い。よく「30人の壁」「50人の壁」「100人の壁」と言いますが、そのタイミングで組織がバラバラになって内部崩壊するケースが多くあります。
組織力があり、急成長しているベンチャー企業の特徴として、カルチャーの強い組織風土が挙げられます。100人規模になってくると、結局社内のマインドセットを統一しないと、社員がバラバラの方向を向いてしまいますから。
離職率を35%超から13%にまで下げるためにやったこと
――御社は社員数が90名弱ですが、ここまでにも組織の壁にぶつかったご経験はありますか?
岡田 多くの経験があります。じつは、離職率が35%超という年が2年続いたことがありました。
単純計算で、2年で社員の70%が入れ替わったことになります。もう、社員と会うのが怖くなった時期もありました。
急成長している会社の多くは大量離職の時があったと聞きます。そういった危機を乗り越えて、会社は成長しているわけです。急成長している会社にはそれに伴う成長痛が現れます。我々もその壁や痛みを乗り越えて、足元離職率13%まで改善が進みました。
――その2年間で、具体的に何を変えたのでしょうか?
岡田 そのタイミングで、社外講師による研修を導入しました。月に1回、2~4時間程度の研修で、自社で重視するマインドセットを徹底的にインプットしたんです。
それまでは、「研修よりも売り上げを上げる方が先」という考えでしたが、研修を始めてから離職率が劇的に減りましたし、社内に共通言語が生まれました。「思考が変われば行動が変わる」という言葉の通りだなと実感しましたね。

結局、重要なのはマインドセットなんです。だから、ベンチャーに必要なマインドを教えてくれる『ベンチャーの作法』は、我々にとってのバイブルになっています。
本を「配って終わり」にしない取り組みとは
――会社から全社員に本書をお配りいただいたと聞きました。ですが、そこまでしても読んでくれないという声もよく聞きます。御社はどうでしたか?
岡田 弊社では研修の一環として、課題図書をメンバーみんなで読んだうえで、本の内容についてディスカッションする場があります。ですので、読んでこないと話についていけません。マインド系の本と知識・スキル系の本を交互に出しています。
毎月行っているので、社員は正直大変だと思います。ですが共通の学びがあると、社員同士の意見交換もしやすくなります。
私の考えとしては、どんな環境でも生き抜くスキルを社員に持ってもらいたいと思っています。
その為のスキルアップとして、手前味噌ですが、非常に良い取り組みだと感じています。

株式会社インフィニティエージェント 代表取締役
1989年、東京都出身。2012年大学在学中にベンチャー企業にインターンとして入社、新規事業責任者としてインターネットメディア事業の立ち上げを行う。2013年11月トランスコスモス株式会社へ入社し、デジタルマーケティングにおけるプランニング、オペレーション業務に従事。「セールスとデジタルを駆使し無限の可能性を引き起こす」を経営理念に、2015年5月、当社を創業。代表取締役に就任。
(本稿は、書籍『ベンチャーの作法』に関連した書き下ろしです。書籍では「なにがあっても結果を出す人の働き方」を多数紹介しています。)