「ベンチャーで活躍する人たちには、共通点があります」
そう語るのは、転職エージェント「キープレイヤーズ」代表の高野秀敏さん。1.1万人以上のキャリア相談、4000社以上の採用支援の経験を持つヘッドハンターであり、「現場」と「経営者」の両方の視点で、「圧倒的に活躍する人たち」と関わってきました。
その高野さんがベンチャー流の「結果を出す働き方」をまとめた書籍『ベンチャーの作法』が刊行。“きれいごと”抜きの仕事論に、「ベンチャーにかぎらず全ての組織で役立つ!」「よくぞここまで書いてくれた!」と、SNSで多数の感想が投稿され、自社の「課題図書」にする企業も続出するなど異例の反響となっています。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「ベンチャー入社前に知っておきたいこと」についてお伝えします。

ある大企業出身者の挑戦と挫折
6年勤めた大企業を辞めて40歳でスタートアップに転職した知人がいます。
理由は「自分の未来が見えたから」だったと言います。
16年、同じ会社に勤めた結果、評価されていないというほどではないものの、自分がどの程度まで出世できるのか、天井が見えたような気がしたそうです。
もっと世に大きな影響を与える仕事がしたいと思い、スタートアップを選びました。
ですが彼は、そのスタートアップをわずか10ヶ月で辞めることになります。
そこには大きく2つの理由があったと、彼は語りました。
入社して気づいた「2つの予想外」
1つは、会社から求められている成果が曖昧だったこと。
「当然会社は、自分の経験やネットワークに期待をしているのだろう。きっと役割は目まぐるしく変わるだろうから、出たとこ勝負でいこう」
彼はそう考えて、「なんでもやります!」とアピールしていたそうです。
その結果、中年で体力が劣り、パフォーマンスは普通以下なのに給料が高い営業になっていたと、自ら語っています。経験者に求められるであろう、事業を前に進めたり、周りを巻き込んだりするような仕事ができていなかったのです。
もう1つの理由は、経験が不要になることもあると認識していなかったことでした。
採用時は、前職である人材サービスでの経験が必要とされていたのが、入社して数ヶ月の間に、その必要性が大幅に下がっていくのを感じたそうです。ベンチャーやスタートアップは方針が目まぐるしく変わるのが普通です。自分の力が発揮できる領域に、会社の方針を動かしていくべきだったと、彼は後悔していました。
大手企業での経験が、必ずしも活かされるとはかぎらないのです。彼のような人は少なくはないと感じます。
ただ「目の前の状況」に対応する
一般的に、仕事ができる人は環境が変わっても結果を出せます。仕事の段取りやコミュニケーションの取り方、調整の仕方など、あらゆる仕事の共通項、いわば「本質」をしっかり理解しているからです。
ですが仕事において重要な本質は同じであっても、環境や状況によってその「量」や「速度」はガラッと変わります。
ベンチャーではひとりで二役、三役、四役をこなさなくてはいけないことも。ときには調整や確認をすっ飛ばして、自分で考えて進めていかなくてはいけなくなったりします。
環境が変われば、過去の経験は役に立たなくなります。
目の前の状況に適応できる人だけが、結果を出せるのです。
(本稿は、書籍『ベンチャーの作法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。書籍では他にも「なにがあっても結果を出す人の働き方」を多数紹介しています。)