米連邦準備制度理事会(FRB)本部の改修は、当初から野心的なものだった。大都市の象徴的な地区に1世紀近く前からある二つの荘厳な建物を改装し、現代化するのだ。それは泥沼にはまった。かつての湿地帯の周辺にあるこの敷地の真下には、予想より高い水位の地下水が潜んでおり、排水が必要だった。アスベストや有害物質による土壌汚染もあった。これら全てに加え、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に伴う供給不足やインフレによる資材費の高騰もあり、改修費がかさんだ。2023年時点ではこのプロジェクトの予算は19億ドル(約2800億円)と見積もられていたが、25年には25億ドルまで膨らんだ。しかし、これは改修プロジェクトという巨大な頭痛の種以上の問題だ。この膨大な費用は、FRBに対して批判的な人々に、FRBの変化を迫り、ジェローム・パウエルFRB議長への新たな一連の攻撃を仕掛ける機会を与えることとなった。FRBが利下げをもっと速いペースで進めないことに不満を募らせてきたドナルド・トランプ米大統領や政権当局者は、高額の費用がかかる本部改修を、不必要にぜいたくだとして非難している。