ミニチュアのビジネスマンとグラフ写真はイメージです Photo:PIXTA

基本給の100%が支給される目標達成奨励金など、高額なインセンティブ制度を導入してきたサムスンが経営の危機に瀕している。ニンジンに釣られた社員の仕事ぶりが、会社の成長をかえって阻害しているというのだ。強い成果主義を導入したサムスンで起きている異変とは?※本稿は、元日本サムスン顧問の石田 賢『揺らぐサムスン共和国:米中対立の狭間で苦悩する巨大財閥』(文眞堂)の一部を抜粋・編集したものです。

目先の利益を優先した
サムスン式成果主義の弊害

 米中対立がもたらしている生産拠点の見直しやサプライチェーンの再構築という難題だけでなく、組織内にもサムスン電子の危機が発生している。

 半導体、スマートフォンなど主力事業の不振だけでなく、家電事業など全般にわたり精彩を欠いている。半導体、スマートフォンに代わる収益源が見当たらないことが、危機論に拍車を掛けている。

 サムスン電子は、既存事業の成功に安住し、その延長線上に新規事業を位置づけていたのではないか。この思考を組織内に浸透させてきたのが、目先の利益を追求する成果主義である。成果主義が、いつの間にか組織全体を硬直化させてきた。

 成果主義は、短期的な収益を達成するには最適な手法である。目先の目標達成に社員の意識を集中できる。一方において、社員に中長期的な視点や考えを失わせるというリスクも内包していた。

 サムスン電子では、ある事業部が対前年比で目標を上回れば、そこに所属する社員全員に目標達成奨励金が与えられる。リーダーおよび社員1人1人の意識は、短期的な業績目標の達成にエネルギーを集中させる。