『ばけばけ』第115回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第115回(2026年3月13日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
ヘブンvs錦織
「何をうろたえているんですか?」
ヘブン(トミー・バストウ)を錦織(吉沢亮)が追い詰めていく。
「何も感じなくなってしまったからじゃないですか? かつてあれほど心を動かされたこの景色に。違いますか?」
「ヘブンさん」と問いかけられて「私、ヘブンない!」と言い返すヘブン。
自分は雨清水八雲になり、日本人になったと。
「ラストサムライ(小日向文世)に付けてもらった名前です」と言い張るヘブンに錦織は冷めた表情を変えない。
「本当にいいんですか? 日本人になるということは、もう、この国でしか書くことができないということですよ」
そう言われてヘブンは黙る。その向こうにトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)がいる。
主題歌がはじまる。
これまで「笑ったり転んだり」がドラマのムードを支配していた。しょんぼりする話のときはしょんぼりに寄り添い、ちょっと楽しい話のときは「日に日に世界が悪くなる」「野垂れ死ぬかもしれない」「黄昏(たそがれ)の街西向きの部屋」などの歌詞は逆説的に呑気(のんき)に聞こえることもある。ところが、第115回に限っては、この主題歌がハマらないように筆者は感じた。はじめてそう感じた。
それは錦織の醸す空気によるものだ。あまりに重く深く、それに合う曲が見つからないような気がしたのだ。朝ドラ主題歌で一躍ブレイクした夫婦デュオ、ハンバート ハンバートの曲はあくまでトキとヘブンのイメージで、病に冒され隣を歩いてくれる人のいない孤独な(ほんとは妻がいるはず)錦織にはそぐわない。でもしょうがない。『ばけばけ』は錦織が主人公ではないから。
「諦めないで落ち込まないで〜」という応援は錦織にはかけられそうにない。







