財政健全化を推し進めるには、社会保障給付費の抑制は最重要課題だ。いまや、国の一般会計における社会保障関係費は一般歳出の半分を超え、このままであれば、高齢者人口が増え続けるのと歩調を合わせ、一段と増大していくことは必至である。抑制策の筆頭として挙げられるのが、「後発医薬品の使用促進」である。5月16日の経済財政諮問会議の有識者議員提出資料にもこのフレーズが登場し、27日の財政制度審議会の報告書でも一段の取り組みの重要性が改めて強調されている。
後発医薬品とは、新医薬品等とその有効成分、分量、用法、用量、効能および効果が同一性を有するものとして承認された医薬品と定義される。いわゆるジェネリック医薬品である。「後発医薬品の使用促進」とは、新医薬品に比べ価格の安い後発医薬品を使い医療費を抑えようということだ。
では、現在、わが国の医療費のうち薬剤費は一体いくらかかっており、後発医薬品の使用促進によってどの程度の医療費抑制効果が見込まれるのか。実は、こうした基本中の基本であるはずの数値が、政府統計や資料のどこを探しても適当なものが見当たらない。
政府の薬剤費は過少推計
現在、政府は、審議会資料の中で薬剤費らしきものを公表してはいる。もっとも、それは過少推計であることをはじめ、定量的な議論に耐えるものではない。むしろ議論をミスリードする可能性すらある。例えば、4月19日の社会保障制度改革国民会議に提出された政府資料がそうである(図表)。
これをみると、平成21(2009)年度の国民医療費36.007兆円に対し薬剤費は8.01兆円、薬剤費比率(薬剤費÷国民医療費)は22.3%となっている。薬剤費比率は、平成5年度こそ28.5%をつけていたものの、平成11年度には19.6%まで低下し、以降も21%~22%程度でほぼ安定している。しかし、この薬剤費は実際の薬剤費より過少に推計されている。