
高級ブランド業界が直面しているのは一時的な停滞なのか、それとも、より深刻な事態なのか。
ルイ・ヴィトンをはじめとする70以上の高級ブランドを傘下に持つ LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン の会長兼最高経営責任者(CEO)で大富豪のベルナール・アルノー氏は、現在の売り上げ低迷は一過性のものだと話す。アルノー氏の見方が正しければ、今は年初来で約20%下落したLVMH株の買い時だ。同氏は1月以降、自身の資金10億ドル(約1480億円)超をLVMH株の取得に費やしている。
しかし投資家は何かがおかしいと懸念している。欧州の主要高級ブランド株を担当するUBSのアナリストらは、投資家が回復を2年間待ち続けた後、「業界の長期的な構造的魅力について懸念し始めている」と指摘した。
LVMHが先週発表した4-6月期(第2四半期)のファッション・レザーグッズ部門売上高は前年同期比9%減と、予想を下回った。同部門はLVMHの主力事業で、2024年のグループ営業利益の80%近くを生み出した。
経営陣は、ルイ・ヴィトンや クリスチャン・ディオール などのブランドの需要低迷について、観光客の消費減少が原因だと説明した。昨年のこの時期は円安で割安感があったため、中国人の消費者が日本で高級品を買い求めていた。しかし、そうした裁定取引の機会は消滅した。今週初めに横ばいの決算を発表したイタリアの高級ファッションブランド、 モンクレール も同様の問題に言及した。
消費者は単に、新型コロナウイルス流行時の記録的な高級品の大量購入で手にした商品を消化しているだけかもしれない。
しかし、何か違和感がある。バーンスタインは今年、高級品業界全体の売上高が横ばいになると予想している。これは異例だ。通常、同業界は世界の経済成長率の2倍のペースで成長するためだ。また、低調な需要は2年連続となる。24年は、景気後退がなかったにもかかわらず、08年の世界金融危機以降で最悪の業績となった。