ラルフ・ローレンやヴィヴィアン・ウエストウッドなど、1970年代に誕生し、今も高い人気を誇るハイブランドたち。ブランドの歴史をたどると、その値段の“本当の価値”が見えてくる。※本稿は、とあるショップのてんちょう『教養としてのハイブランド フツーの白シャツが10万円もする理由』(彩図社)の一部を抜粋・編集したものです。
ジーンズをエロティックに
変身させたカルバン・クライン

カルバン・クラインは1942年に生まれた、アメリカ・ニューヨークのファッションデザイナーです。ヨーロッパではなくアメリカ出身の高級ブランドのデザイナーというのは、この時代では割と珍しいと思います。
カルバン・クラインは洗練されたシルエットやエロティックなイメージと結びつけたマーケティングが非常に上手なデザイナーで、正式にジーンズを手掛け始めたのは70年代後半のことでした。
1980年には当時まだ15歳だった俳優「ブルック・シールズ」を広告に起用し、「私とカルバン(のジーンズ)の間には何もない」というセクシーなCMをテレビで放送し、話題を呼びました(※1)。
この広告は「児童ポルノではないか」という批判もあったそうですが、効果は絶大で、カルバンのジーンズは初週で約20万本も売れる大ヒット商品になりました。
土臭いカッコよさを持つ元来のジーンズにカルバンの手が加わることで、タイトで美しい、セクシーなシルエットという新たな付加価値が与えられたのです。
※1…カルバン・クラインは、「ジーンズとはエロティシズムである」という言葉を残しています。