子どもが少し大きくなっても、親の悩みや不安は尽きません。今日もイヤな叱り方をしてしまったと、落ち込むことも……。きれいごとでは進まない子育てでうまく立ち回るために、23年間の小学校教師経験を含む40年超の実績のある教育評論家・親力アドバイザーの親野智可等:著『ずるい子育て』(ダイヤモンド社)に頼ってみませんか。本連載では、多種多様な子どもたちとその保護者に向き合って生まれた「親がラク&子どもが伸びる」一石二鳥のテクニックを紹介していきます。

子育て中の親御さんたちは「子どもを自立させたい」とよく言います。それで、私は講演のときに「自立とは何ができることですか?」と尋ねたことがあります。すると、次のような答が返ってきました。
朝、自分で起きられる
自分で着替えられる
進んで歯を磨く
言われなくても進んで宿題をやる
明日の支度を自分でする
やるべきことを自分でちゃんとやる
つまり、「親がやらせたいことを自分からやってくれる、育てやすい子」のことを自立した子といっているのです。
もちろんこうしたこともできたほうがいいです。でも、子どものときにできなくても、大人になるにつれてだんだんできるようになることも多いので、過度に心配する必要はありません。
それに、子どもの成長ペースは生まれつきの個人差が非常に大きくて百人百様です。小さいときからしっかりできる早熟型の子もいますが、そうでない晩熟型の子もいます。早ければいいというものではありませんので、急ぐ必要はありません。
そして、私が強調したいのは、本当に大事な自立とは、こういうこととはまったく別ものだということです。それは、「自分がやりたいことを自分で見つけて、どんどんやっていける」ということです。特にこれからの激動の時代においてはこれが大事です。
大人でも「言われたことはちゃんとやれるけど、自分でやりたいことは特にない」という人はけっこういます。これでは本当に自立しているとはいえません。
昭和の時代は、これでよかったかもしれません。言われたことがちゃんとできる歯車として、優秀な指示待ち人間が大事にされた時代だったからです。
でも、既に始まっている激動の時代には、こういう指示待ちの姿勢では、仕事でもプライベートでもイマイチということになりかねません。
仕事では、「部長! これこれこういうわけで、こういう企画がいいと思います。ぜひ私にやらせてください」と自分から言える人がどんどん伸びていけます。
プライベートでも、みんなが読む本を読み、みんなが見る映画を見て、みんなが行くところに行き、みんながやることをやるということでは、流され続ける人生になってしまいます。
これでは、50代60代になっても、「自分は何が好きなのかわからない」ということになりかねません。
自分はこういう本を読みたい、こういうことをやりたい、こういう生き方をしたいという主体性が大事です。そういう生き方ができている人は、本当に充実した時間を過ごせて幸せですし、年を重ねるごとに独自の輝きを放つようになります。
このように「自分がやりたいことを、自分で見つけて、どんどんやっていける」という真の自立を可能にするには、子どものときからそれを大事にしてく必要があります。
子どものときに、「言われたことに従うこと」ばかりをよしとして育てたのに、大人になって急に変われといってもムリです。
最後に大事なことを付け加えます。真に自立している子は、親の言うことを聞かないので育てにくいことが多いです。ですから親としては大変です。その大変さをエンジョイしてください。
◆本稿は『ずるい子育て』(ダイヤモンド社)の著者・親野智可等が子どもに関わるすべての人に伝えたい書きおろしメッセージです。