「世界中で話題のストイシズムに基づく新しい人生観が身につく」
「ただの投資本ではない画期的な金融哲学書」
そんな感想が全国から届いているのが『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』(スコット・ギャロウェイ著/児島修訳)だ。
どうすれば不運な目に遭わずに投資で成功し、幸福な人生を送れるのか?
今回はマネックス証券チーフ・ストラテジストで大学でも教鞭を執る広木隆氏に寄稿いただいた。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

「方程式」の意味とは?
読者は何を期待して本書『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』を手に取るのだろう。
タイトルに惹かれて買うとすれば、ぶっちゃけ、お金持ちになる方法を知りたいという動機からだろう。
だとすれば、裏切られること、請け合いである。
「金、返せ!」という怒りの声も相当数、届いているのではないか?(編集部さん、どうですか?)
なぜなら、手っ取り早くお金持ちになる方法がわかりやすく示されているわけでないからだ。
代わりに出てくるのは、
富=フォーカス+(ストイシズム×時間×分散投資)
という方程式である。
ちなみに、方程式とは、「変数を含む等式で、その変数が特定の値をとり、かつ、その特定の値を代入したときに限り成り立つものをいう」(広辞苑)。
簡単に言えば、値がわからない変数が入った等式だ。
普通の人はそんな説明を聞いてもピンとこないだろう。
その代わり、「方程式」と聞いて思い浮かべるのは、「成功や結果を導く一定の要素やパターン」のことだろう。
勝利の方程式
プロ野球の「勝利の方程式」がいい例だ。
リードした展開で終盤のイニングを任せる中継ぎ・セットアッパー・抑え(クローザー)のリリーフ投手陣による「勝ちパターン」のことである。
例えば、今年野球殿堂入りした元中日ドラゴンズの岩瀬仁紀投手などは「岩瀬につなげれば勝てる」といった「勝利の方程式」が確立していた。
「野球の方程式」では「○○につなげれば勝てる」のだから、「富の方程式」も「○○すればお金持ちになれる」という明確な「プロセス」「道筋」「パターン」が書いてあると思うのが人情である。
つまり「○○すれば」⇒「お金持ち」というパターンが読者の期待なので、早くその「○○」を知りたい! 袋とじを破りたい!! という気持ちがMAXだろう。
ところが、本書には開けっぴろげな○○も××も袋とじもないのである。
本書に書かれているのは、
富=フォーカス+(ストイシズム×時間×分散投資)
という方程式である。
真っ向ストレート勝負の本
本当に方程式が書いてある。
「富の方程式」というタイトルの本を買って、本当に方程式が書かれているからといって怒るのは筋違いというものだが、読者にしてみれば、まさか本当に数式が出てくるとは思っていないのだから仕方ない。
これは典型的な認識ギャップである。
読者にしてみれば、「方程式」とはよく使われる比喩であって、「富を築くための必勝パターン」が順を追ってわかりやすく示されるだろうと期待して本書を買うに違いない。
ところが、書いてあるのは、この方程式そのものだ。
読者にしてみれば肩透かしをくらったようなものだが、著者は変化球ではなく、まさに直球をど真ん中にずばりと投げ込んでくる。真っ向ストレート勝負なのである。
だから、そのストレートに手が出ない。
まず、大半の人は数式に嫌悪感を示す。
フォーカス、ストイシズム、時間、分散投資の意味
僕も株式セミナーなどでたまにファイナンス(金融理論)の説明をするとき、数式を出すと、会場のムードが途端に悪くなる。
ところが、これが響くというか刺さるというか、こういうアプローチを好む人がいる。
世の中には、言葉で説明されるより数式で示してもらったほうが理解しやすい人種がいて、そういう人たちは少数派かもしれないが確かに存在する。
僕の周りにも片手程度の人数だがそのタイプの人がいる。
そういうタイプの人をここでは便宜的に「数学的思考に優れた人」と呼ぶことにしよう。
数学的思考に優れた人にとっては
Y=A+(B×C×D)
Y:….
A:….
と式と変数の定義さえあればことは足りてしまう。
いや、むしろ言葉で説明されるより、よっぽどわかりやすくて効率的だという。
富=(富、イコール)、これは左辺の富は、右辺と等しいと言っている。
つまり右辺のフォーカス、ストイシズム、時間、分散投資が富の要素だということだ。
そしてそれらの定義は、
フォーカス:仕事に集中して収入を高める
ストイシズム:無駄遣いをしない節度ある生活
時間:複利の力を活かした長期投資
分散投資:分散投資でリスクを減らす
である。
数学的思考に優れた人にとってはこれで十分だから、400ページを超える本書を読む必要がない。まことに効率的である。
数学的思考に優れた人は、この式
富=フォーカス+(ストイシズム×時間×分散投資)
を見て、あえて散文的に翻訳すれば以下のように理解するのである。
「富を築くには、がんばって働き、無駄遣いしないで浮いた分を長期分散投資で増やす。以上」
ポイントは、「以上」である。
これだけである。これですべて、これ以上何もないのである。
これを見た一般人の読者は、やっぱり「金、返せ!」となるだろう。
しかし、考えてもみてください。
富を築く方法が、たった1行の数式で書かれている――それを言葉で表しても同じく1行で足りる。
これほど効率的な情報の伝え方はない。
それを1800円+税で手に入れられるとすれば安いものじゃないですか!
だったらこんな分厚い本である意味がないって?
なぜ400ページもあるのかって?
この続きはまた次回。
(本書は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』に関する書き下ろし投稿です)
広木 隆(ひろき・たかし)
上智大学外国語学部卒。神戸大学大学院・経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。2010年より、マネックス証券株式会社 専門役員/チーフ・ストラテジスト。青山学院大学大学院・国際マネジメント研究科で9年間教鞭をとったのち、2023年4月より社会構想大学院大学教授として着任。テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、BSテレビ東京「日経プラス9」等のレギュラーコメンテーターを務めるなどメディアへの出演も多数。