上海を出発し急加速した列車の窓から見える木々は、緑色のぼやけた帯となって流れていった。時速約320キロメートルで走る高速列車の中で、筆者はまるで中国を早送りで進んでいるような、現実離れした感覚に包まれた。窓から視線を外すと、列車の動きはもっと緩やかに感じられた。スマートな制服姿の乗務員がスナックボックスを配っていたが、筆者はもっと満足感のあるものが食べたくなり、スターバックスが併設された軽食コーナーに向かい、カプチーノと小籠包を注文した。「(米鉄道会社の)アムトラックとは大違いだ」こうして、国内線の飛行機に一度も乗ることなく3200キロ以上を移動する、中国中部への1週間の一人旅が始まった。世界最大かつ最も急速に拡大している中国の高速鉄道システムは、効率性、移動範囲、車内での軽食といった点で、筆者のような初めての訪問者が不安を感じかねない国を探索するのに理想的な手段であることが分かった。