メールを開いた瞬間、「この人は賢いな」「わかりやすいな」と思える文章がある。じつはそんなメールには、共通する「ある特徴」が隠れている。
ハーバード大学教授であり、ハーバード行動洞察グループ(BIG)のディレクターを務める行動科学者トッド・ロジャース。行動科学で人を動かす方法を研究してきた彼が、「読まれる文章」「読まれない文章」の原理を突き詰め、科学的に正しい文章術として体系化したのが『忙しい人に読んでもらえる文章術』(トッド・ロジャース、ジェシカ・ラスキー=フィンク著、千葉敏生訳)だ。本稿では同書から特別に一部を公開。優秀な人のメールがなぜすごいのかを紹介する。

頭のいい人は「読み手に負担を与えまい」と気をつける
脳の注意機能は限られているので、とくに忙しいときは、高い集中力を必要とする作業を最後までやりきるのは難しい。
そのため、相手になるべく集中力を使わせないようにするのは、依頼を実行してもらう可能性を高めるのに効果的な1つの方法といえる。
その方法はさまざまだが、一例を挙げると、「読み手に提示する選択肢の数を抑える」「行動の選択肢を減らす」「行動に必要なプロセスを明確に伝える」などがある。
「選択肢」を絞る
書き手は読み手に多すぎる選択肢を提示してしまうことが多い。多くの選択肢を与えるのは、一見すると親切で思いやりがあるようだが、実際には相手の注意力に思わぬ「負担」をかけてしまう。
数々の研究によると、私たちは多すぎる選択肢を前にすると、いますぐ選ぶのはたいへんすぎると感じ、決断を(永久に)先送りしてしまうことが多い。
選択肢の数を減らせば、選びやすくなるし、選ぶ負担も減る。
オバマ元大統領はインタビューで次のように述べ、この戦略を見事に表現している。
「私がグレーや青のスーツしか着ないことにお気づきでしょう。それは判断の数を減らすためです。食べるものや着るものについての判断はしたくない。私にはほかにも下さなければならない判断がいくらでもありますから」
(本原稿は、トッド・ロジャース、ジェシカ・ラスキー=フィンク著『忙しい人に読んでもらえる文章術』〈千葉敏生訳〉からの抜粋です)