当事者意識には
4つのパターンがある
上司などが口々に「あなたのためになる」と説明する背景には、「当事者意識」が関係しています。
当事者意識とは何でしょうか。考える際に参考になるものとして、以下の図のとおり、4つのパターンがあります。

パターン1:「傍観」
自分には関係ないし、興味もないという無関心な状態です。これは、解決の主体が他人で、原因の所在も他人にある場合です。
パターン2:「丸投げ」
自分が原因なのに、なんとかしてほしいと他人任せにすること。他責的であり、甘えであり、無責任な態度と言えます。これは、解決の主体が他人で、原因の所在が自分にある場合です。
パターン3:「自分の始末は自分でつける」
自分でまいた種は自分で刈り取るということですから、ある種当たり前のことです。責任感はあるものの、このことを当事者意識とは呼びません。これは、解決の主体が自分で、原因の所在も自分にある場合です。
パターン4:「他人のせいでも自分が動く」
自分のせいではなくても、自分が率先して解決のために働く。チームの誰かが困っていたら手を差し伸べる。課題に気づいたら提案する。実はこれこそが真の当事者意識です。原因の所在が他人にあっても、解決の主体を自分に置くことです。
組織市民行動の研究が
当事者意識の利己的動機を明らかに
当事者意識が高い人は、合理的で自己利益に基づく動機があります。このことは、組織市民行動の研究によって明らかになっています※1。
組織市民行動とは、組織の中で個人が自発的に行う役割外の行動のことで、そこには5つの構成要素があります。
(1)愛他主義(利他主義)、つまり援助。困っている同僚や上司、顧客を助ける。
(2)誠実さ。欠勤しない、サボらない、余計な休憩を勝手に取らないといった行動。
(3)礼儀正しさ。仕事の報告・連絡・相談を行い、情報を他人と共有し、仕事仲間に迷惑をかけないよう努めること。
(4)スポーツマンシップ。理想的な環境でなくても不平不満を言わず、我慢し、「こういうこともあるよね」とその状況を楽しむような態度。
(5)市民の美徳。会社のイベントなどに積極的に参加する。
この中で、当事者意識と特に関係が深いのは、(1)「愛他主義」と(5)「市民の美徳」です。
愛他主義とは、まさに原因の所在が相手にあっても、解決の主体を自分に置く行動そのものです。自分の担当ではない問題にも率先して対処する。誰かが課題を抱えていることに気づいたら、積極的にサポートを申し出る。真の当事者意識の典型例と言えるでしょう。
市民の美徳は、運動会を企画する人がいない時に、自分から企画を申し出る、参加自由の懇親会に積極的に参加し幹事を務めるといったもので、こうした行動は、「誰がやってもいい(やらなくてもいい)はずのこと」を自分の問題として捉え、行動に移す当事者意識の表れです。
これらの行動に共通するのは、「役割外行動」だということです。つまり、職務として最低限の役割を超えて、自発的に行う行動なのです。
https://www.researchgate.net/profile/Dennis-Organ/publication/247083204_Organizational_Citizenship_Behavior_It's_Construct_Clean-Up_Time/links/540a203d0cf2d8daaabfa0ae/Organizational-Citizenship-Behavior-Its-Construct-Clean-Up-Time.pdf この論文では組織行動原理を次のように分類している。Altruism(利他性)、Conscientiousness(良心性・誠実さ)、Sportsmanship(スポーツマンシップ)、Courtesy(礼儀正しさ)、Civic Virtue(市民的美徳)。