
「感じのいい人」とは、いったいどんな人なのか。職場などで目にするけれど、いざ特徴を説明しようとするとなかなか難しい。人事評価や人間関係にも影響しやすいこのテーマを、心理学的な視点からひもとくと「空気を読める力」に行き着く。では、その力を持つ人は具体的にどんな行動をしているのか――。連載第17回では、ビジネスの現場ですぐに役立つヒントを紹介する。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)
「感じのいい人」とは何か
決して安易な人ではない
最近、組織運営や人材育成の現場で「感じのいい人だなぁ」という印象を与える人がいます。場を明るくして、無害で、ともすれば味方になってくれそうな、ちょっと協力的な雰囲気をも醸し出す「感じのいい人」とは、一体どのような特徴を備えていて、どんな能力を持つ人なのでしょうか。
感じのいい人とは、私見では、ずばり「空気が読める人」のことです。
「空気が読める人」を心理学的に定義すると、会話のプロセスに敏感な人、今この瞬間に自分の感情を身体感覚として認知し、俯瞰できる人です。つまり、言葉にされていないその場の雰囲気、人の感情、意図、状況を察知して、それに応じて自分の振る舞いや言動を柔軟に調整することができる人ということになります。
もう少し分かりやすく表現するなら、空気を読む力とは、その場にいる他者との関係性に目を向けられる力と言い換えることができます。この力がある人は、信頼や配慮、安心感を相手に与えることができるため、結果として良好な人間関係を築きやすくなるのです。
昨今、「空気なんか読んでいたらダメだ」という風潮も見受けられますが、これには断固反論したいと思います。空気を読むということと、相手に迎合したり、遠慮したり、忖度するということは根本的に異なるものだからです。
相手におもねって、相手が気持ちよくなるように発言するのは、結局のところ「相手がこう思っていそうだから自分はそれに逆らわないでおこう」という受け身のコミュニケーションに過ぎません。これでは確かにその場の空気に流されることになってしまいます。
一方で、真の意味で空気を読むということは、今この場にどんな感情の流れや力関係が働いていて、自分が何を言えばより建設的で、この場の全員が納得できるような対話ができそうかを前向きに考え、行動に移すことです。決して安易にその場の空気に流されるということではありません。