社会的な「成功レール」の崩壊、どんどん不確実になる未来、SNSにあふれる他人の「キラキラ」…。そんな中で、自分の「やりたいこと」がわからず戸惑う人が、世代を問わず増えています。本連載は、『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)の著者・しずかみちこさんが、やりたいことを無理に探さなくても、日々が充実し、迷いがなくなり、自分らしい「道」が自然に見えてくる方法を、本書から編集・抜粋して紹介します。

同じ成果でもここまで違う!「回り道をした人」と「近道だけの人」の決定的な差Photo: Adobe Stock

「近道」が決して近道ではないとわかるラーメン店主のたとえ話

自分の道を見つけるためのファーストステップで、様々な経験をしながら世界を広げていると、正解への近道が欲しくなる瞬間もあるでしょう。けれども、回り道をしたからこそ、身につくものがあります。

例えば「究極のラーメン」を求める2人のラーメン店主がいるとしましょう。
Aさんは他店で修業した後に独立し、試行錯誤しお客様からの酷評に悔し涙を流しつつ回り道をした末に、自らが納得できる「究極の味」を見つけ出しました。

もう1人のBさんは、Aさんのレシピを手に入れて、すぐにお店を出しました。結果として、AさんとBさんのお店のラーメンの味は、全く同じです。

もし、AさんとBさんが、自分のラーメンの味に不満を漏らすお客様に出会ったとき、どういう対応になるでしょうか。

Aさんは試行錯誤しつつ作り上げた自分の味に自信があるので、自分とお客様では求める味が違ったのだと理解して、受け止めることができます。
残念に思いつつも、自分の味を堂々と貫くことができます。

一方、Bさんは、Aさんのレシピに問題があるのではとAさんに怒りを感じたり、このレシピを使い続けることに不安になったり、レシピを盲信するあまり「お前の舌のほうが間違っている!」とお客様に怒りを感じたりしてしまうでしょう。

Aさんは回り道をしたことで、自分が心の底から自信を持てる自分の味を見つけました。
お客様に「もっと麺を細くして縮らせたほうが」とご意見をいただいても、既に試行錯誤の段階で試し済みなので、自分のやり方が揺らぎはしません。

でも、Bさんは、お客様に「もっとこうしたら~」と言われたときに、それを試したことがないので、自分の腕に自信がなくなり不安になってしまいます。

自分の「道」と言い切れるためには試行錯誤が必要

試行錯誤をしつつ真剣に自分と向き合った時間は、自分の「味」への信頼の土台です。この信頼がなければ、ちょっと壁にぶつかっただけで揺らいでしまいます。

自分の「味」は自分の「道」とも言い換えられます。

これこそが自分の道だと言い切れるものを見つけるためには、迷い、悩み、試行錯誤する時間が必要なのです。

*本記事は、しずかみちこ著『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。