社会的な「成功レール」の崩壊、どんどん不確実になる未来、SNSにあふれる他人の「キラキラ」…。そんな中で、自分の「やりたいこと」がわからず戸惑う人が、世代を問わず増えています。本連載は、『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)の著者・しずかみちこさんが、やりたいことを無理に探さなくても、日々が充実し、迷いがなくなり、自分らしい「道」が自然に見えてくる方法を、本書から編集・抜粋して紹介します。

【世界を広げる3つの習慣】「当たり前の自分」が“特別な強み”に変わるまでPhoto: Adobe Stock

「意識の広がり」が自分にもたらすこと

本書では、やりたいことがなくても自分の道が見えてくるための最初のステップとして、「世界を広げて自分の強みの種に刺激を与えること」を提案しています。

世界を広げるための3つのアプローチ「①世の中の仕組みを知る」「②世界を縦に広げる」「③世界を横に広げる」を続けていると、「意識の広がり」が起こります。

例え話でいうと、ある絵を見るときに、世界を広げる前の状態で見ても「きれいだな」「何か難しそうだな」という感想しか持てなかったとします。しかし、その絵が描かれた時代の背景や技法について学び(仕組みを知り)、同世代の他の作家との関係性に思いを馳せ(縦に広げ)、他の様々なジャンルの作品に触れた上で見る(横に広げる)と、感じ方が全く変わります。

色の使い方に込められた意図、構図の工夫、時代背景との関連性など、以前は気づかなかった要素が見えてきて、同じ絵でも、見える世界が全く違ってきます。

仕事の見え方も変わってくる

この意識の広がりは仕事でも起こります。毎日同じ仕事を繰り返していると、単調で変化のない日々のように感じることがあります。しかし、その仕事の仕組みを深く知り、同じ仕事でも異なる環境や条件での違いを観察し、関連する分野に目を向けることで、全く違った側面が見えてくるのです。

例えば、事務職の方が、単に書類を処理するだけでなく、その書類が組織全体でどのような役割を果たしているのかを知り、他部署や他社での同様の業務との違いを理解し、関連する業務や新しいシステムについて学ぶことで、自分の仕事の意味や可能性が違って見えてきます。

ある方は、長年続けてきた著作物の版権管理の仕事を、クリエイティビティのないルーティンでつまらない書類のやりとりだと感じていました。

ところが、コンテンツビジネスについて学び、法律についての知識を深め、異なる規模や業種の会社との違いを知ることで、自分の仕事は創作者のクリエイティビティを守るための大事な仕事であり、ビジネスの収益化や拡大展開にも直結する中核的な仕事であるという意識に変わりました。同じ仕事をしていても、捉え方が変わったのです。

逆に、世界を知ることで自分の仕事が何の役に立っているのか疑問に思うことが出てくるかもしれません。もっと他にいいやり方があると気づくこともあるでしょう。

あなたにとっての当たり前が、万人にとっての当たり前ではない

意識が広がると、自分の「当たり前」の中に隠れていた価値に気づくこともできます。それは、無意識のうちにやってきた工夫かもしれませんし、仕事の中で培ってきた独自の視点かもしれません。

ある営業職の方は、「営業は数字を追うだけ」と思い込んでいましたが、営業の本質や様々な営業スタイルを学ぶうちに、自分が顧客との関係構築において独自のアプローチをしていたことに気づきました。

彼は無意識のうちに、顧客の話をじっくり聴き、本当のニーズを引き出す「傾聴」を強みとしていたのです。

これは彼にとっては当たり前のことでしたが苦手な人も多い貴重なスキルです。
意識が広がることで、自分の中の当たり前が、自分ならではの強みだったと気づくことができたのです。

意識の広がりが「強み」の発見につながる

世界を広げる活動を続けていると、自分が自然と力を入れている部分、無意識に工夫している部分、他の人とは違う視点で見ている部分などが浮かび上がってきます。

これらは、あなたの「強みの種」です。

世界が広がると自分の位置づけが変わります。「みんなできるはず」と思っていたことが、実は自分の特別な才能だったと気づくことがあります。

逆に、「自分だけができない」と思い込んでいたことが、実は他の人たちも苦手にしていると知り、自分を責める必要がないと気づくこともあります。

世界を広げる活動は、単に新しい情報や経験を得るだけではありません。
日常生活の見方そのものを変え、そこに潜む可能性や価値を発見する力を養うのです。
そして、意識が広がれば広がるほど、自分自身への理解も深まっていくのです。

*本記事は、しずかみちこ著『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。